さて、小論文短期集中講座も大詰めを迎えてきましたね。講座はあと2つなので、残りの講座もしっかり付いてきてくださいね。小論文短期集中講座をしっかり読みこなして、小論文の学習を重ねれば、必ずや合格答案を作成するスキルは身につくはずです。
第4回の講座では、本番の試験で高得点を取るための学習方法をお伝えします。
小論文は他の受験科目と異なり、正解がない科目です。それゆえ、日頃の学習の難しさを感じる人も多くいらっしゃるでしょう。受験生時代の私もそうでした。
そこで、今回の講座では、私の現役時代の失敗経験も踏まえて、小論文の試験本番で高得点を取るために、どのように学習していけば良いかを解説します。
限られた受験生生活のなかで、闇雲に学習することは非効率です。まずは小論文学習のセオリーを理解しましょう。その上で、必要に応じてあなたなりの学習を+αで取り入れていきましょう。
そもそも、受験小論文で合格水準の答案を安定的に作成するためは、どのようなポイントがあるのでしょうか?まずは、小論文に求められる要素について理解しておきましょう。
この記事の目次
小論文試験で合格に必要な3つの要素
小論文で合格水準に達するために必要な要素は、大きく3つに整理することができます。「論理的思考力」、「知識」、「慣れ」の3つです。それぞれ見ていきましょう。
論理的思考力を身につける
小論文のトリセツにおいて、論理的思考力とは、筋道立てて論理的に文章を組み立て、答案用紙に表現するための技術と定義します。より簡単に言えば、あなたの文章を読むことで、読み手が理解し納得できるような、分かりやすい文章を書くということです。
それでは、どうやって論理的思考力を身につければ良いでしょうか?以下に3つの対策を記します。
・現代文を解く
・要約する
・アウトラインを書く
現代文を解く
論理的思考力を身につけるためには、読解力が必要です。実際の小論文試験では、課題文が言わんとすることを短時間で正確に把握するための読解力が求められるからです。
読解力とは、著者が何を伝えたいのか(主張)、その理由、そして根拠・論拠を追っていく作業です。小論文試験では自分で論理的な文章を書く(アウトプット)ことが求められますが、現代文では著者の論理を正確に読み解く(インプット)ことが求められるのです。
これらは、コインの表と裏の関係です。どちらか一方だけが伸びることはなく、インプット・アウトプットの双方を鍛えることによって、どちらも成長していくものです。
現代文の課題文は、読解力の観点から、論理的思考力を身につけるために最適な文章だと言えます。特に、センター試験の現代文の過去問を解くことをお勧めします。センター試験の現代文は、評論と小説の2つから構成されていますが、小論文の対策としては評論のみ取り組めば良いでしょう。もちろん、受験でセンター試験を利用される方は、受験対策の一環として、どちらも解いていきましょう。
要約するスキルを身につける
要約は、大学受験小論文で必須のスキルです。小論文の問いで、「この資料の主張を300文字で要約せよ」という問題が出題されることもありますし、直接的な問いではなくとも、論点として「資料の内容を踏まえて、あなたの意見を述べよ」という出題事例も多数見受けられます。
そもそも、なぜ出題者側は、資料の内容を要約することを求めるのでしょうか?それは、出題者である大学教授の期待を考えると、答えが見えてきます。
大学教授は、学者すなわち研究者です。研究者は、自分の研究テーマの先行研究をしっかり調査し、その上に自分自身が新たな研究結果を付け加えるという流れで、研究を進めていきます。まったくゼロから始める研究というものはないんですね。したがって、他者の研究内容を理解し、自分なりに整理するというステップが必須になるのです。
この「研究のお作法」とも言うべき研究への取り組み方、すなわち「インプット→アウトプット」という流れを、受験生にも理解して欲しいし、その素養を有する学生に入学して欲しい、という意図があるのだと考えられます。
このように、資料を要約する力、要約力は、入試でも求められますし、もちろん大学の授業でも常に必要とされるスキルです。ぜひ受験時代から鍛えておきましょう。
要約のコツについては、別途記事にまとめようと思いますので、お待ちくださいね。
アウトラインを書く
アウトラインは、本文全体の骨子であり、論理を切り取った見取り図です。アウトラインが論理的な構成になっていないと、小論文の答案も同様に論理的な文章になり得ません。
したがって、日頃の学習では、まずはアウトラインを書くことに焦点を当てるようにしましょう。アウトラインの書き方は、前回の小論文短期集中講座③で解説しましたので、こちらを復習してくださいね。
ポイントだけ抑えておきますと、
・1段落200〜300文字で構成し、それぞれの段落に意味づけをする
・主張 – 理由 – 根拠・論拠のまとまりを作る
・資料を主張展開のためのサポートとして活用する
・問いのメインテーマと論点への回答が漏れなく含まれている
ということになります。
知識を身につける
さて、次は小論文で合格水準に達するために必要な3つの要素の2つ目、知識についてお伝えします。知識はあればあるほど、小論文試験においては有利に戦えるようになります。
ただし、限られた時間の中でどの範囲までカバーしておくべきなのかが、悩ましいですよね。そして、習得した知識を実際の小論文試験でどのようにして活用するかも、あまり教えてくれる人はいません。
また、どちらかと言うと、細々とした知識というよりも、「これからの社会はどうなっていくか?」という社会の未来図、大局的な世界観(ビジョン)が求められます。
この辺りの、知識のつけ方とその活用の仕方については、小論文短期集中講座⑤で詳しく解説しますが、ここでは1冊だけ参考書を紹介します。
小論文を学ぶ―知の構築のためにこの本は、小論文受験者にとってまさに必読本です。この本さえ読めば、大学受験小論文の知識については必要十分だと言っても過言ではありません。ただし、内容はかなり骨太でして、慶応の大学生、あるいは一般的な社会人が読んでも、内容を十分に理解できない場合もあるでしょう。
しかし、この本を熟読し、十分に理解できれば、他の小論文受験生の「付け焼き刃」的な答案とは、比べ物にならないほど洗練された答案になることは間違いないと確信しています。
残念ながら書店ではあまり見かけなくなってしまったので、まずはamazonで購入しておきましょう。
小論文を書くことに慣れる
最後に、小論文で合格水準に達するために必要な3つの要素の3つ目、慣れについてお伝えします。
第3回の小論文短期集中講座では、アウトラインを書くことの重要性をお伝えしました。確かに重要ではありますが、アウトラインだけ書いていても、試験本番で答案用紙をしっかり埋められるとは限りません。アウトラインだけでなく、やはり一定数は実際の試験問題を解くことが大事です。
そこで、1つおすすめの学習方法をお伝えします。試験当日にこれまでの勉強の成果が発揮できるように、試験直前は当日の試験時間に合わせて過去問を解くようにしましょう。
たとえば、10:00から英語の試験が始まり、その後13:00から小論文の試験が始まるならば、その時間に合わせて起床し、準備して過去問に臨むということです。
毎日これを繰り返すとさすがにしんどいですが、直前期の2〜3日は試験当日の感覚を掴む上でも、ぜひやっておくべきです。
作成したアウトラインや答案に対して、フィードバックをもらう
これまで、小論文試験で合格に必要な3つの要素についてお話ししてきましたが、実はこれらの対策を行うだけでは、小論文試験で合格水準に達することはおぼつかないと言えます。なぜなら、あなたの答案が、果たして大学側が求める合格水準に達しているかどうか、自分だけでは判断ができないからです。
小論文は、受験科目で唯一、独学ができない科目です。もちろん、他の科目も独学で学習しようとすると大変ですが、小論文だけは先生やコーチといった存在が不可欠です。あなたが作成した答案が第三者に評価され、フィードバックを受けることを通じて、あなたの小論文答案の質がより高まっていくためです。
また、同じ大学を受験する友達が身近にいるのであれば、ぜひ小論文の答案を見せ合い、ディスカッションしてみることをお勧めします。それぞれの答案を見比べて、どこが評価されていて、どの部分が改善点なのか、他の受験生の思考をインプットすることで、自分の答案に活かせる部分が見つかってくるでしょう。
そうはいっても、小論文の受験者数は増えてきたとは言え、まだまだ身近に受験生は少ないのが現状です。そのため、小論文のトリセツでは、小論文受験生のためのコミュニティを運営していく予定です。このようなコミュニティは、慶応SFCではワークショップと呼ばれ、学生には馴染みがあるものです。
近々ご案内しますので、お待ちくださいね。
過去問を解く
本番の試験で高得点を取るための学習方法の最後にお伝えしたいことは、過去問をしっかり解くべき、ということです。
過去問は、各大学の傾向が如実に表れます。大学受験予備校の模試や予想問題に取り組むことも無駄とは言いませんが、過去問に取り組む方が圧倒的に合格の近道になります。
僕自身は、慶応SFCの両学部(総合政策・環境情報)の小論文対策として、すべての過去問に取り組みました。慶応SFCが設立された時期は1990年で、僕は2005年入学なので、15年分になりますね。
「そんな大昔の過去問に取り組む必要ありますか?」という疑問が聞こえてきそうですね。この質問への回答としては、「明確に取り組む価値がある」とお伝えしています。
たしかに、優先順位としては、直近の過去問から取り組むべきでしょう。ただ、「この過去問は5年前に類似のテーマが出題されていたな」といったことが度々起こるのです。
それだけでなく、10年前、15年前だからといって、大学(学部)の理念が変わるわけではありません。大学の根底に通ずる理念はいつも普遍なはずです。
したがって、15年、20年と過去問に取り組めば取り組むほど、あなたの思考力・発想力は、大学の理念とリンクしていくはずなのです。
「この発想って、SFCっぽいな」と思えるようになってくれば、大学受験小論文に取り組むことが、とても愉しく思えてくるはずです。
まとめ
第4回の小論文短期集中講座では、本番の試験で高得点を取るための学習方法についてお話ししてきました。ポイントをまとめますね。
- 小論文で合格水準に達するために必要な要素は、「論理的思考力」「知識」「慣れ」の3つ
- 論理的思考力を身につけるために、「現代文を解く」「要約する」「アウトラインを書く」という3点を練習しよう
- 知識をつけるために、小論文を学ぶ―知の構築のために
を熟読しよう
- 小論文に慣れるために、試験直前は、試験当日のスケジュールで過去問に取り組もう
- 作成した小論文答案は、小論文を理解している第三者に見てもらい、フィードバックをもらおう
さて、次回はいよいよ第5回、最後の小論文短期集中講座⑤となりました。最後の講座では、小論文の答案作成に必要な知識の習得の仕方をお伝えします。