いよいよ小論文短期集中講座も最終回になりました。最終回の第5回では、小論文の答案作成に必要な知識の習得の仕方をお伝えします。
小論文短期集中講座①では、受験小論文に必要な知識の習得のための有益な情報源として、以下のようなものがあるとお伝えしました。
1. 過去問の資料
2. 志望大学のHP、カリキュラム、シラバス
3. 小論文の基本書
4. 時事ネタの収集
5. 小論文の先生や他の生徒から得る、知識や知恵
今回は、この4点についてより具体的にお伝えしていくとともに、これらの知識をいかにして小論文の答案に活用していくか、その活用方法についてもお伝えしていきます。
この記事の目次
合格水準の答案に作成するための、知識の活用方法
日頃から小論文に関連する知識を蓄えておくことは大事です。小論文答案を作成する上で、「ネタ」として活用することで、より説得力のある文章を書きやすくなるためです。
小論文答案作成の事前準備として蓄えた知識ですが、それを小論文答案の中で「適切に」使わないと宝の持ち腐れになってしまい、評価が上がるどころかむしろ下がってしまう恐れもあります。そこで、知識をどのようにして活用し、より小論文の説得力を高めるかについて、お話しましょう。
これまで口を酸っぱくしてお伝えしたように、小論文の基本的な構成は、「主張」→「理由」→「根拠・論拠」というものでしたね。アウトラインを書く際に段落を分けますが、知識は「根拠・論拠」の段落で使われるものです。そのうちの1つの段落に、ネタを1つあるいは2つ挿入するイメージです。
知識は、小論文のテーマ毎にいくつか蓄積しておくと良いでしょう。「国際支援系のテーマが出題されたら、日本のODAの拠出金額の概算値と、政府とNGOとの関係に触れよう」といった感じです。
予め知識、ネタをしっかり準備しておくことで、試験当日にテーマに応じたネタを、頭の引き出しから取り出すことができます。そうすることで、文字数を埋めることが容易になりますし、試験当日に慌てることが少なくなるでしょう。
それでは、小論文に必要な知識をどのように蓄えておくべきでしょうか?先ほど挙げた5つの情報源について、詳細をお伝えします。
1.過去問の資料
過去問を解く必要性について議論が分かれることもあるようですが、小論文のトリセツでは、100%過去問を解くべきだと断言します。なぜなら、入学試験は大学の教授陣が綿密な計画を練って作るものであり、「どんな思考力をもつ学生に入学して欲しいか?」という観点から入試問題が作成されるからです。AO入試を含む大学の入学試験は、大学の唯一のエントリーマネジメントの手法なのです。したがって、入学試験には、大学の特色が色濃く反映されていると考えて間違いありません。
大学の過去問を解く際は、時間の許す限り、できるだけ昔に遡って多くの過去問に取り組みましょう。「今年の小論文のテーマは、7年前に類似のテーマが出題されていたな…!」ということがしばしば起こるのです。
とはいえ、赤本では直近5年分程度しか掲載されておらず、また「紙面の都合で資料の一部は省略しています」という謎の現象も見受けられます(笑)。
より多くの過去問を解く際は、東進ハイスクールの過去問データベースがオススメです。無料会員登録をする必要がありますが、かなり多くの過去問と解答が格納されています。ただし、残念ながら慶応SFCの小論文は、直近10年分程度しか保存されていないようです。
2.志望大学のHP、カリキュラム、シラバス
志望大学のHPは、情報の宝庫です。先ほど、入試試験は、大学の教授陣によって作成されるとお伝えしました。大学教授は皆、それぞれ専門の研究領域を有しています。そして、教授の専門分野と、それらを統合した大学(学部)の専門領域は、すべて大学のHPに記載されています。HPには、シラバスと呼ばれる講義概要も掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
具体的な講義の内容だけでなく、大学のHPには、大学の理念や、学生へのメッセージも掲載されています。これらの内容は、小論文答案を作成する際にもとても役立ちますので、ぜひ時間を割いて読んでみることをお勧めします。
なお、例年、慶応SFC(総合政策・環境情報学部)の小論文は、大学での研究領域=大学教授の研究テーマが、ダイレクトに大学入試の小論文に反映されています。SFC受験生は、必ず大学HPでの情報収集をするようにしてください。
3.小論文の基本書
小論文のトリセツではもうお馴染みではありますが、こちらでも改めて紹介します。小論文のトリセツが絶対の確信をもってお勧めする小論文学習の必携本は、「小論文を学ぶ―知の構築のために
この本は、小論文答案作成の小手先のテクニックを解説するものではありません。あくまでも、小論文の答案を作成するために押さえておくべき世界観、考え方、背景知識を、歴史的背景に基づいて体得できる点が特徴です。
僕はこの本を熟読し、マーカーを引いたり付箋を貼ったりして、それこそボロボロになるまで読み込みましたが、そのおかげでどんなテーマの出題でも怖いものなしだと思えるようになりました。大げさではなく、この本を熟読すれば、大学受験小論文の答案作成に必要な背景知識は、すべて獲得できると言っても過言ではありません。
古い本ではありますが、小手先のテクニックを解説する本ではないので、まったく心配には及びません。むしろ、なぜかあまり注目されていないようなので、他の受験生を出し抜くチャンスです!
4.時事ネタの収集
時事ネタの収集は、小論文試験の対策において、必須とまでは言わないものの、ぜひ行っておきたいです。というのも、小論文試験のテーマは、その年の主要トピックに関連したテーマが選ばれることがしばしばあるからです。特に、試験問題を作成するタイミングは、おそらく夏〜秋にかけてだと思われるため、春〜夏頃のホットトピックを探すことが狙い目です。
また、時事ネタを探すだけでは不十分です。そのネタに対して、「自分ならどう考えるか?」という視点をもつことが大事です。出来れば、主張と理由を書き出すようにしましょう。
そのための最適なツールが、newspicksという「ソーシャル経済メディア」です。これは、単に経済ニュース記事を読むだけでなく、その記事に対してコメントをつけられるので、自分のアウトプットの練習になりますし、また他の人のコメントを読むことができるので、ニュースの読み方の新たな視点を獲得することができます。
こうした地道なアウトプットの積み重ねが、小論文試験当日でも、大いに役立つはずです。
5.小論文の先生や他の生徒から得る、知識や知恵
最後に、人の繋がりで知識を蓄積したり、新たな着眼点を得ることは、あなたの小論文をより良いものにすることに役立ちます。あなたの小論文に、どのような情報(根拠・論拠)を肉付けすることで、より主張の説得力が高まるのか?あるいは、他の受験生のどのような部分が評価されているのか?こういった具体的な情報は、本を読むだけでは分からないことです。そのため、小論文はフィードバックを受けることが、成績を伸ばす上で大事なのです。
小論文のトリセツでは、こういったフィードバックの仕組みを提供していきたいと考えていますので、ご案内まで少しお待ちくださいね。
志望大学を理解せよ
これまで、小論文試験の対策として、押さえておくべき5つの有益な情報源についてお話しましたが、特に、2.志望大学のHP、カリキュラム、シラバスを理解することの重要性は、あまり指摘されていないので、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。
たとえば、以下の問いは、2016年の慶応SFC(総合政策学部)の小論文です。これをじっくり読んでみてください。志望大学を理解することの重要性がつかめてくると思います。
慶應義塾大学総合政策学部では、社会で生じている問題を、特定の学問分野の枠組みにとらわれず、分野融合的な視点から分析することに重点をおいた教育・研究活動を行っています。この問題では、総合政策学部に入学した後に、あなた自身がどのように研究を進めていくのかを具体的にイメージしてもらうことを期待しています。
(中略)
問3
あなたが2016年4月に総合政策学部に入学したとすれば、2020年頃に卒業することになるでしょう。2020年に、日本の「格差」はどうなっていると予想しますか。特に①国際比較、②職業の世代間移動、③高齢化という3つの視点で見たときの変化をすべて予想してください。そして、あなたの予想をより説得的なものにするために、あなたが総合政策学部に入学後、どのような調査や分析が必要になるかということもあわせて、600字以内で記述しなさい。
慶應義塾大学総合政策学部(2016年度)
いかがでしょうか?大学の研究会(他大学で言われるゼミを、SFCでは研究会と呼びます)での研究概要(アブストラクト)の発表とほとんど同一内容です。
今回のテーマは、「格差」に焦点を当てていますが、広い枠組みとしては公共政策です。慶応SFCのHPを見ると分かりますが、2018年時点では、総合政策学部には大きく5つの研究領域が存在します。
・政策デザインの分野
・社会イノベーションの分野
・国際戦略の分野
・経営・組織の分野
・都市・地域戦略の分野
今回のテーマである「格差」は、政策デザインの分野からの出題だと思われます。より具体的には、「経済・財政」の枠組みの「公共政策プロジェクト」です。
公共政策・経済政策を分析対象としつつ、政策過程での合意形成やガバナンスに関わる問題を同時に扱います。参加者は、各自の具体的研究テーマの研究発表とディスカッションを通じて、学際的な研究手法を身に付けた上で、政策提言等の社会的な情報発信を行い、高度な専門知識を活用した実務の実践が期待されます。
慶応SFCのHPを事前にチェックしておいて、こういった知識が事前にあれば、試験当日でも慌てることなく、問いに対処できるようになるでしょう。
大学のHPは、小論文のヒントの宝庫
小論文試験の出題テーマを押さえておくことだけが、志望大学のHPを読む目的ではありません。やや裏技的ではありますが、より大事な点としては、慶応SFCが求める発想・考え方のイメージが理解できるようになることです。
慶応SFCのHPには、学部長のメッセージや理念、研究領域、SFCの魅力やビデオなど、豊富なコンテンツが掲載されています。これは、大学側も、将来の学生や外部からしっかり慶応SFCという大学を評価してもらいたい、という意思の表れです。
SFCは何を目指していて、どういう大学で何を教えているのか?これらの答えが、HPを熟読すると見えてくるはずです。そうすれば、受験小論文では、SFCが求める発想・考え方・視点に基づいた回答を作成することができるようになるでしょう。
SFCのHPは、慶応SFCの受験生にとって、まさに必読のwebサイトです。SFC受験生の方は、ぜひともSFCのHPを熟読してくださいね。
総合政策学部・環境情報学部紹介ページ:https://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/
まとめ
全5回の短期集中講座の読了、お疲れ様でした!
小論文の知識を暗記することは、合格水準の回答を作成する上での必須条件ではありません。ただし、小論文の知識を蓄積しておくことは、試験当日に必要以上に慌てずに、落ち着いて答案を埋めるための助けとなります。
そして、ネタの効率的な集め方を5つご紹介しました。
1.過去問の資料
2.志望大学のHP、カリキュラム、シラバス
3.小論文の基本書
4.時事ネタの収集
5.小論文の先生や他の生徒から得る、知識や知恵
これらの情報源を熟読し、自分のネタとして体得することが、試験で合格水準の答案を作成することに直結します。ぜひ今日から取り組んでみてください。
今回は、5回にわたってお話してきた小論文短期集中講座は終わりです。何度も読み返して、ぜひあなたなりの小論文の解き方をマスターしてくださいね。
なお、これからSFC受験を検討されている受験生の皆さまへ。
小論文のトリセツでは、慶應SFC対策に特化したオンライン学習塾「慶應SFCインテンシブコース」を運営しています。2023年度の慶應SFC合格率は、45.5%でした(小論文添削サービス受講生含む)。
ぜひ下記URLより、カリキュラムの詳細をご確認ください。
https://shoronbun.jp/sfc_intensive2024/
慶應SFCの合格率100%を目指しているので、大変なカリキュラムであることは確かですが、この講座を第5回まで読み込んだあなたは、もう慶應SFCに向き合い準備は出来ているはず。
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