小論文短期集中講座の第2回は、STEP2「問いを熟読し、論点を押さえる」という点について、詳しくお伝えしていきます。問いに対して正確に回答することは、小論文の試験で高得点を取るための必須条件となりますので、確実にマスターするようにしておきましょう。
この記事の目次
なぜ問いに対して、正しく回答できないのか?
なぜ多くの生徒は、問いに対して、適切な回答ができないのでしょうか?これには、大きく2つの原因があります。
1つは、問いを分解できていないこと。2つ目は、文章を書き進めているうちに、論点から逸れていってしまうことです。それぞれ見ていきましょう。
まず、問いの分解について、多くの小論文の課題は、1つの問いの中に、複数の論点が含まれている場合が多いです。以前は、
「自由とは何か?あなたの考えを800文字以内で述べなさい。」
というような、シンプルな問いに対して回答する出題例も多くありましたが、最近の小論文はより複雑な問いが設定されている事例が主流のようです。それらの論点を漏れなく読み取り、すべての論点に対して回答することが求められます。
次に、文章を書き進めているうちに、論点から逸れていってしまう点について、なぜこう言ったことが起きてしまうかと考えてみると、書き始める前段階でアウトラインがしっかり構成できていない、ということに尽きます。
小論文短期集中講座の第3回にて、具体的な事例をもとにアウトラインの書き方を見ていきますが、アウトラインはあなたが作成する小論文の地図です。地図がないと、どこがゴールで、どの道を通っていけばゴールに辿り着くのか、分からなくなってしまいます。
したがって、問いを分解して論点を正確に抑えること、そして答案を書き始める前にアウトラインを作成し、論点に対する回答を漏らさずにすることが大事です。
問いを分解し、論点を抽出する
それでは、問いを分解するとはどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
まず、この問いを読んでみてください。
あなたが2016年4月に総合政策学部に入学したとすれば、2020年頃に卒業することになるでしょう。2020年に、日本の「格差」はどうなっていると予想しますか。特に①国際比較、②職業の世代間移動、③高齢化という3つの視点で見たときの変化をすべて予想して下さい。そして、あなたの予想をより説得的なものにするために、あなたが総合政策学部に入学後、どのような調査や分析が必要になるかということもあわせて、600字以内で記述しなさい。(2016年度 慶應義塾大学総合政策学部 小論文試験 問3)
この問いには、いくつの論点が含まれているか、分かりますでしょうか?先を読み進める前に、1分間考えてみてください。
正解は、4つの論点が含まれています。それでは、問いを分解して、論点を抽出してみましょう。
問い:2020年に、日本の「格差」はどうなっていると予想するか?
論点①…国際比較の視点を踏まえて、変化を予想する
論点②…職業の世代間移動の視点を踏まえて、変化を予想する
論点③…高齢化の視点を踏まえて、変化を予想する
論点④…総合政策学部に入学後、どのような調査や分析が必要になるかを含める
この回の問題では、1つの大きな問いに対して、4つの論点が紐付いています。この論点は、小論文の答案を作成するための条件、あるいは制約と捉えると分かりやすいかもしれません。
抽出した論点に対する回答を用意する
さて、問いに含まれる論点を余すことなく抽出することができるようになった後は、それぞれの論点に対して、あなたなりの回答を用意する必要があります。この論点に対応する回答が用意できないと、採点担当者から見ると、問いに答えられていない回答という評価が下され、大幅な減点の対象となりますので、要注意です。
したがって、「論点」に対する「回答」は、アウトラインに必ず組み込んでおくようにしましょう。1つでも論点に対する回答を書き漏らしてしまうと、大幅な減点は避けられません。
資料を答案作成のヒントにする
近年の小論文試験では、資料が添付されている場合が多いです。資料の分量はさまざまですが、特に慶応SFC(総合政策学部、環境情報学部)の小論文試験では、例年膨大な量の資料が添付されています。しかも難解な資料が多く、まともにすべての文章を読むと、それだけで1時間くらい消耗してしまいます。
そのため、「資料なんて読まずに、自力で考えて答案用紙を埋めよう」と思う人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです。資料は答案を作成するためのヒントであり、資料を活用することは合格答案を作成するための必要条件なのです。
これはどういうことでしょうか?これは大学での授業の課題を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。
大学では、単位(授業)毎によっては、レポートの提出によって成績が決められることがあります(ちなみに、SFCは、どちらかというと、他大学や他学部と比較して、レポートが成績の大部分を占める単位が多い印象があります)。
その際、レポートは参考文献など何もなく、まっさらな状態から作成するものでしょうか?違いますね、先生の授業や参考文献などで事前の知識をインプットした上で、その文脈に沿って、課題が提示する「問い」に対して、自らの主張を展開していくものですね。
実は、小論文試験でもまったく同じです。資料を有効に活用し、資料が展開する議論の内容を汲み取った上で、あなた自身の主張を展開することが求められているのです。
資料を効率的に読み進める、資料活用の方法
それでは、資料をどのよう活用すれば良いでしょうか?
まず、いきなり資料を読み始めないことが大事です。膨大な量の資料を冒頭から読み始めると、情報の洪水に溺れてしまい、答案作成のヒントとして活かすことは難しいでしょう。また、短い制限時間のなかで、大量の資料を読み込むことは現実的に厳しいと言えます。
では、どうするか。逆転の発想が必要なのです。
ここでもヒントは「問い」です。問いを読んだ時点で、一度立ち止まってください。そして、その時点で、あなたなりの主張の「骨子」を作るようにしましょう。
主張の骨子とは、問いに対する、もっともシンプルな回答です。この主張の骨子に、肉付けをしていくイメージで、資料を読み進めていきます。主張の説得力を高めるための根拠、論拠として、資料を活用するイメージです。
したがって、資料を最初から最後まで一言一句を読む必要はありません。緩急をつけて読むようにしてください。イメージとしては、「あ、この部分は使える!」というように、自分が欲しい情報をピックアップする感覚です。
小論文の基本的な展開の仕方は、「主張→理由→根拠・論拠」という流れでしたね。この根拠・論拠として使えそうな情報を、資料から探してきましょう。
でも、「問いを読んだだけでは、主張が浮かんでこない場合はどうすれば良いのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
結論から言えば、それでも問いを読んだ時点で、何かしら、あなた自身の回答を出すようにしてください。
問いを読んだ時点であなた自身の主張がない状態のまま膨大な資料を読み進めても、頭の中が混乱して焦りが募る一方です。
あなた自身の考えを「仮置き」した状態で資料を読み進めると、あなたの主張を補完するような知識や情報が、引っかかってきます。この感覚を持つことが、限られた制限時間内に合格水準の小論文を書く上で、とても大事なポイントになります。
まとめ
小論文短期集中講座②では、「問いを熟読し、論点を押さえる」ということについて学んできました。以下の点をしっかり抑えるようにしましょう。
・答案を書き始める前にアウトラインを作成し、論点に対する回答を漏らさないようにする
・資料は答案を作成するためのヒントであり、資料を活用することは合格答案を作成するための必要条件
・問いを読んだ時点で一度立ち止まり、その時点であなたなりの主張の「骨子」を作る
・主張の説得力を高めるための根拠、論拠として、資料を活用する
「問いに対して回答をする」、このシンプルながら多くの受験生ができていない点を抑えることで、合格水準の小論文の答案の作成に大きく近づきます。
今回の講座も、ぜひ読み込んであなたの答案に活かしてくださいね。
次回は、小論文短期集中講座③ これだけ!小論文で合格点を獲得するための最短プログラムです。小論文作成の肝、STEP3「アウトラインの作成の仕方」を学習しましょう。