慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 総合政策学部(2012年) 答案例・詳細解説

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慶應SFC小論文の駆け込み寺

慶應義塾大学 総合政策学部2012年【問い】

問題1
資料 1〜5 の内容を参考に、 各資料に共通する論点、 立場の異なる論点、 あなたが重要と考える論点などを挙げつつ、 グローバリゼーションが世界の政治・経済にもたらしている変化について論じてください。
(800 字)

問題2
資料 1〜5 は、 いずれもグローバリゼーションの拡大と深化が進む現代の特徴を論じたものですが、 問題 2 では未来についての予測を問います。 資料 1〜5 のいずれか一つを選択し、その資料が取り上げているテーマに関して、次なる「バージョン」もしくは「波」の特徴がどのようなものになるかを予測し、 その新しい「 バージョン」 もしくは「 波」 の到来によって世界の政治・経済はいかに変化するのか、あなたの考えを述べてください。( 解答用紙の欄に資料1〜5のどれを選択したのか、番号を記入してください。)
(600 字)

慶應義塾大学 総合政策学部2012年【答案例】

問1

グローバリゼーションが世界の政治・経済に与える影響は多岐にわたる。資料1から5に共通するのは、グローバリゼーションを歴史的な「波」や「バージョン」に区分して捉える視点だ。これらの現象は、一定の方向性をもって段階的に進展してきた。ただし、資料によって着目する対象や時代設定は異なり、グローバリゼーションの影響が複合的であることがわかる。

第一に、グローバリゼーションは国境を越えた経済活動の拡大をもたらした。多国籍企業がグローバルなネットワークを構築し、新興国の台頭を促したのだ。第二に、国家の役割も変容を迫られている。資料3の国家資本主義のように、市場原理に対抗する国家主導の動きも見られる。第三に、資料4が示すように、地域統合が政治・経済両面で深化した。域内の自由な移動を実現する地域ブロック化が進行中だ。

また、資料5が論じるように、グローバリゼーションは民主化の世界的な進展とも連動する。情報化を背景に、市民の政治参加要求が高まっているのだ。途上国での民主化の波、先進国での成熟した民主主義の模索が同時進行している。ただし、これらの変化は一様ではない。新興国の台頭は先進国との摩擦を生み、民主化は不安定化を招くこともある。グローバリゼーションは新たな課題も生じさせているのだ。

以上より、グローバリゼーションは政治・経済のあらゆる側面に影響を及ぼす重要な潮流だと言えよう。国家間の相互依存が深まる中、各国は協調と競争のバランスを模索せざるを得ない。市場と国家の役割、地域統合と主権、民主化と安定性など、多様な課題への同時対応が求められる。グローバリゼーションは今後も世界の焦点であり続ける。私たちはその本質を見極める洞察力を磨く必要があるのだ。

問2

資料3を取り上げ、国家資本主義における次なる「波」の特徴と、それがもたらす世界の政治・経済への変化について論じる。

資料3が示すように、国家資本主義は4つの波を経て拡大してきた。第一の波は産油国による石油の政治利用、第二の波は新興国の台頭、第三の波は政府系ファンドの登場である。2008年の金融危機への各国の対応が第四の波とされる。この流れを踏まえれば、国家資本主義の次なる波は、新興国の国家主導型経済の深化と先進国における国家関与の定着であろう。

資源ナショナリズムの高まりや新興国の経済力増大を指摘した資料3の記述からは、今後、新興国が国有企業や政府系ファンドを梃子に、国益追求型の経済戦略を強化していくことが予想される。他方、先進国でも、金融危機後の国家関与が恒常化し、戦略的分野での官民協調が常態化するかもしれない。自由市場原理の修正を迫られるのだ。

この新しい波は、自由貿易体制の揺らぎと地政学リスクの高まりをもたらしかねない。国家主導型経済の台頭は、保護主義の誘惑を高め、大国間の覇権争いに発展するリスクを孕む。国益最優先の経済ナショナリズムは、グローバルなルール形成を阻害するだろう。国家資本主義の拡大は、政治と経済の一体化を促し、国家間対立の増幅にもつながりかねないのだ。

このように、国家資本主義の新たな波は、新興国での国家主導型経済の深化と先進国での国家関与の定着という特徴を持ち、自由市場の理念を揺るがしかねない。各国がいかに国益と国際協調のバランスを取るかが問われることになる。

慶應義塾大学 総合政策学部2012年【解説】

慶應義塾大学総合政策学部の入試で課される小論文試験は、資料読解力と論理的思考力、そして自身の見解を説得力をもって表現する力が問われる難関です。ここでは、2012年度の小論文試験を題材に、問1と問2の解説を通じて、SFC入試の攻略法を探っていきましょう。

問1は、提示された5つの資料に基づき、グローバリゼーションが世界の政治・経済にもたらす変化について論じることが求められています。まず着目すべきは、資料1から5に共通する論点を抽出することです。ここでは、グローバリゼーションや民主化などの現象を歴史的な「波」や「バージョン」に区分して捉える視点が共通しています。各資料は一定の方向性をもって段階的に進展する過程を描いていますが、着目する対象や時代設定は異なり、グローバリゼーションの複合的な影響が示唆されています。

この点を踏まえ、グローバリゼーションがもたらす変化としては、以下の4点を指摘できるでしょう。第一に、国境を越えた経済活動の拡大です。資料1や2が示すように、多国籍企業のグローバルなネットワーク構築と新興国の台頭が進んでいます。第二に、資料3で論じられる国家資本主義のように、市場原理に対抗する国家主導の動きも見られ、国家の役割変容が迫られています。第三に、資料4が示す地域統合の深化です。政治・経済両面で域内の自由化を実現する地域ブロック化が加速しているのです。第四に、資料5で指摘される民主化の進展です。情報化を背景に、市民の政治参加要求が世界的に高まっています。

ただし、これらの変化は一様ではなく、新たな課題も生じさせています。新興国の台頭は先進国との摩擦を生み、民主化の過程では不安定化するケースもあります。よって、グローバリゼーションは政治・経済のあらゆる側面に影響を及ぼす重要な潮流ですが、各国は協調と競争のバランスを模索せざるを得ません。市場と国家の役割、地域統合と主権、民主化と安定性など、多様な課題への同時対応が求められるのです。

次に問2ですが、こちらは資料1から5のいずれか一つを選び、取り上げているテーマに関する次なる「バージョン」や「波」の特徴と、世界の政治・経済への影響を論じることが求められています。ここでは資料3を題材に、国家資本主義の新しい波について考察してみましょう。

資料3では、国家資本主義の拡大を4つの波で捉えています。第一の波は産油国による石油の政治利用、第二の波は新興国の台頭、第三の波は政府系ファンドの登場、第四の波は2008年金融危機後の各国の対応とされています。この流れを踏まえると、次なる波の特徴としては、新興国における国家主導型経済の深化と、先進国での国家関与の定着が予想されます。

資源ナショナリズムの高まりや新興国の経済力増大を背景に、国有企業や政府系ファンドを通じた国益追求型の経済戦略が強化される一方、先進国でも金融危機後の国家関与が恒常化し、戦略分野での官民協調が常態化するかもしれません。自由市場原理の修正を迫られるのです。

このような新たな波は、自由貿易体制の揺らぎと地政学リスクの高まりをもたらしかねません。国家主導型経済の台頭は保護主義の誘惑を高め、大国間の覇権争いを助長するリスクを孕みます。国益最優先の経済ナショナリズムはグローバルなルール形成を阻害し、政治と経済の一体化を促して国家間対立を増幅させるおそれもあるのです。

以上のように、国家資本主義の新たな波は、新興国での国家主導型経済の深化と先進国での国家関与の定着を特徴とし、自由市場の理念を揺るがしかねません。各国が国益と国際協調のバランスをいかに取るかが問われることになるでしょう。

さて、ここまでの考察を通じて明らかなのは、SFCの小論文では、単に資料の内容を要約するだけでは不十分だということです。資料から共通の論点を抽出し、現代社会の多面的な理解に基づいて自身の見解を論理的に展開する力が求められているのです。また、設問で与えられた条件(文字数、段落構成など)を遵守しつつ、端的かつ説得力をもって論を展開するライティング力も重要になります。

SFCを志望する皆さんは、日頃から社会の動向を鋭敏に観察し、自分なりの視点で問題の本質を捉える姿勢を養ってください。そして、多様な考え方に触れつつ、自身の見解を説得的に表現する訓練を重ねることが肝要です。時事問題への関心を高め、資料を読み解く力と、論理的に文章を構成する力を磨けば、必ずや合格への道が拓けるはずです。

最後になりましたが、SFCの小論文は難関ゆえに合格の価値も大きいと言えます。グローバル社会の諸課題に挑戦する意欲を持ち、粘り強く思考と表現のトレーニングを積んでください。皆さんの挑戦を心から応援しています!

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ABOUT ME
Kaz
2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人&慶應SFCインテンシブコースの責任者です。志望大学合格に向けて、受験生を全力でサポート致します!

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