慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 環境情報学部(2011年) 答案例・詳細解説

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慶應SFC小論文の駆け込み寺

慶應義塾大学 環境情報学部2011年【問い】

いま現実に存在する問題を、科学技術を用いて科学的に計量する新たな方法を提案してください。
計量する問題は、科学技術上の問題でも、社会問題でもかまいません。地球規模の問題でも、身近な問題でもかまいません。
科学技術を駆使して現実の問題に取り組むためには、問題を計量し、データを得みことが欠かせません。得られたデータを通して問題を正確に把握し、それを踏まえて解決方法を考案していくことになります。
また、測定するデータに基づき、問題の要点を把握するのに役立つ新しい単位を考案してください。以上について、問1〜4に答えてください。

問1 【解決したい問題】あなたが解決しようとする、現実に存在している問題を200字以内で説明してください。なぜそれが問題なのかについても述べてください。

問2【問題を計量する方法】問題を科学的に計量するために、どんなデータをどんな方法で測定するのかを400字以内で説明してください。すでに存在する科学技術を使うだftでなく、将来に開発を期待する未来の科学技術を用いてもかまいません。
闇雲に大量のデータを得るだけでは、問題の本質を理解することはできません。問題を正確に把握するために、何を知る必要があり、どうすればそれを計量することができるのか、考え抜いてください。
科学的な測定には、誰が何度測っても(許容できる誤差の範囲内で)同じデータを得られることが求められます。これを再現性のある方法と言います。提案する測定方法に再現性が備わっているかも考慮してください(再現性に欠けるおそれのある方法の一例が資料7にあります)。
問題解決のために2つ以上の計測を実施する必要があると考えられる場合には、その中で最も重要と思われる測定について述べてください。

問3【新しい単位】あなたの考案した単位を200字以内で説明してください。単一のデータがそのまま単位になってもいいですし、いくつかのデータを組み合わせて算出する単位でもかまいません。ただし、問2で答えたデータを必ず用いてください(資料5〜7参照)。
単位の意義については問4で尋ねるので、問3では、新しい単位で表される数値が何を意味し、どんなデータをどのように組み合わせて計算するかに絞って記述してください。
資料5 (炭素フラックス)を例にとれば「大気、海洋、森林等の炭素を貯蔵する各炭素プール間の炭素の移動量を表す。単位面積当り、単位時間当りの移動炭素重量として算出される」などとなります。

問4【新しい単位によって明らかになる問題の性質】この単位によって、問題のどんな性質が明らかになるのかを600字以内で説明してください。単位で表される数値が、大きい(小さい)とき、増加(減少)傾向にあるとき、めまぐるしく増減を繰り返しているとき、あるいは変化が見られないとき、それは問題のどんな性質を反映しているのでしょう。あなたの提案する単位が、問題を理解する上でいかに役立つかをアピールしてください。
資料5を例にとれば「森林伐採により森林によるCO2吸収量が減少すれば、大気から森林への炭素フラックスの減少として表れる」などとなるでしょう。

慶應義塾大学 環境情報学部2011年【答案例】

問1

先進国と途上国の間には、教育格差が存在している。質の高い教育を受ける機会が限られているため、途上国の子供たちは貧困から抜け出すことが難しい。教育格差は社会的・経済的な不平等を助長し、国際的な発展の妨げとなっている。この問題の解決には、教育施設や教材の整備状況、就学率、学力レベルなどを定量的に評価し、格差の実態を明らかにする必要がある。そして、格差是正に向けた効果的な支援策を講じることが求められる。

問2

教育格差を定量的に評価するために、以下のデータを測定する。まず、教育施設の数や教員の数、教材の整備状況などの基礎的なデータを収集する。次に、就学率や中退率、学力テストの結果など、教育の機会と質に関するデータを測定する。これらのデータは、各国政府の統計や国際機関の調査を通じて入手できる。

さらに、教育が社会・経済に与える影響を評価するため、卒業生の進路や収入、社会的地位などのデータも必要である。これらは追跡調査により収集できるが、データの連携や個人情報の保護が課題となる。

将来的には、AIを活用した学習状況の分析や、ブロックチェーン技術による教育データの管理など、新しい技術の導入も期待される。衛星画像や地理情報システムを用いて、教育施設の分布状況をリアルタイムで把握することも可能になるだろう。こうした技術を活用し、教育格差の実態をより正確かつ効率的に把握することが求められる。

問3

教育機会均等指数(EOI: Education Opportunity Index)を提案する。この指数は、教育施設数、教員数、就学率、学力テストの結果を組み合わせて算出される。各データを偏差値化し、その平均値をEOIとする。偏差値が50を超えると、教育の機会と質が平均以上であることを示す。EOIが高いほど、教育格差が小さいと評価できる。

問4

教育機会均等指数(EOI)は、教育格差問題の性質を明らかにするのに役立つ。EOIが高い国や地域では、教育施設や教員が十分に整備され、就学率も高く、学力レベルも平均以上であることを示している。つまり、教育の機会と質が保証され、格差が小さいことを意味する。逆に、EOIが低い場合は、教育資源の不足や就学率の低さ、学力レベルの低迷など、教育格差が大きい状態にあることを示唆している。

EOIの推移を見ることで、教育格差問題の動向を把握できる。EOIが年々上昇傾向にあれば、教育環境の改善や就学率の向上、学力レベルの底上げなどにより、格差が縮小しつつあると評価できる。反対に、EOIが低下傾向にあれば、教育格差が拡大していると判断できる。EOIが大きく変動する場合は、教育政策の変更や社会情勢の影響を受けている可能性がある。EOIに変化が見られない場合は、教育格差の固定化が進んでいると解釈できる。

EOIは、単に教育資源の量的な差異だけでなく、教育の質的な側面も考慮に入れている。学力テストの結果を指標に含めることで、教育の成果を評価し、格差の実態をより正確に捉えることができる。また、EOIは国や地域間の比較を可能にするため、グローバルな教育格差の現状と課題を浮き彫りにできる。

教育格差は、社会的・経済的な不平等の根源であり、持続可能な発展を阻む要因でもある。EOIを用いることで、格差の現状を定量的に評価し、問題の所在を明らかにできる。EOIの動向を注視し、格差是正に向けた施策の効果を測定することも可能となる。教育の機会均等の実現に向けて、EOIは有用な指標となるだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部2011年【解説】

問1の解説

この回答例では、「先進国と途上国の間の教育格差」という国際的な問題を取り上げています。途上国の子供たちが「質の高い教育を受ける機会が限られている」ため、「貧困から抜け出すことが難しい」と格差の悪影響を説明しています。

さらに、教育格差が「社会的・経済的な不平等を助長し、国際的な発展の妨げとなっている」と、問題の深刻さを訴えています。

問題解決のためには、「教育施設や教材の整備状況、就学率、学力レベルなどの定量的な評価」により「格差の実態を明らかにする」ことが必要だと主張しています。そのうえで、「格差是正に向けた効果的な支援策」の必要性を述べ、小論文全体の流れを意識した書き出しにしています。

問2の解説

この回答例では、教育格差を定量的に評価するために必要なデータとその測定方法を具体的に説明しています。

基礎的なデータとして「教育施設の数や教員の数、教材の整備状況」を挙げ、教育の機会と質に関するデータとして「就学率や中退率、学力テストの結果」を提示しています。これらのデータ収集方法として、「各国政府の統計や国際機関の調査」を示唆しています。

さらに、教育の社会・経済的影響を評価するためのデータとして、「卒業生の進路や収入、社会的地位」を挙げ、追跡調査の必要性とデータ連携や個人情報保護の課題に言及しています。

将来の技術として、「AIを活用した学習状況の分析」や「ブロックチェーン技術による教育データの管理」、「衛星画像や地理情報システムを用いた教育施設の分布状況の把握」などを提案し、より正確かつ効率的なデータ収集の可能性を示しています。

問3の解説

この回答例では、「教育機会均等指数(EOI: Education Opportunity Index)」という新しい単位を提案しています。EOIは、問2で挙げた「教育施設数、教員数、就学率、学力テストの結果」のデータを組み合わせて算出されます。

各データを偏差値化することで、データの尺度を統一し、その平均値をEOIとして定義しています。偏差値が50を超えると、教育の機会と質が平均以上であることを示すとしています。

EOIが高いほど、教育格差が小さいと評価できるとしており、この指数が教育格差の大小を示す指標として機能することを説明しています。

問4の解説

この回答例では、教育機会均等指数(EOI)によって明らかになる教育格差問題の性質を詳しく説明しています。

EOIの高低が示す状態として、教育資源の整備状況、就学率、学力レベルなどの観点から、教育の機会と質の保証や格差の大小との関係を説明しています。

EOIの推移から読み取れる教育格差問題の動向について、上昇傾向、低下傾向、大きな変動、変化の見られない場合のそれぞれの解釈を提示しています。

EOIが教育の質的な側面も考慮に入れていることや、国や地域間の比較を可能にすることで、格差の実態をより正確に捉え、グローバルな現状と課題を浮き彫りにできると説明しています。

最後に、教育格差が社会的・経済的な不平等の根源であり、持続可能な発展を阻む要因であることに言及し、EOIが格差の現状評価や是正施策の効果測定に役立つことをアピールしています。

なお、環境情報学部2024年の受験生が書いた合格答案(別解)はこちら

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Kaz
2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人&慶應SFCインテンシブコースの責任者です。志望大学合格に向けて、受験生を全力でサポート致します!

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