慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 環境情報学部2023年 答案例・詳細解説

慶應SFCインテンシブコース

慶應義塾大学 環境情報学部2023年【問い】

文献1〜3は「生きる」とはどういうことかを問うもの、文献4はそもそも科学とはどういう営みかを論じるもの、文献5〜6は「生きること」に向きあう学問的態度のありかたを問うものです。文献6からは、文献1~5の重要な論点を総合的に含む文章を抜粋しています。6つの文献を熟読し、以下の設問1~6に答えてください。

設問1:文献1と文献2に通底することを論じてください(150字以内)。

設問2:文献1と文献3に通底することを論じてください(200字以内)。

設問3:文献4のいう定性的研究の重要さを、文献3の考者の主張と関係づけて論じてください(250字以内)。

設問4:文献2と文献5に通底することを論じてください(150字以内)。

設問5:文献5が論じる「生きることに向きあうための学問的態度」は、文献4の主張する定性的研究のやりかたにも相通じるものがあります。それについて論じてください(250字以内)。

設問6:Aさんは建築を専門とする大学院生で、これまで室内環境、特に断熱や熱対流のシミュレーションの研究に従事してきました。Bさん(50代前半)はAさんが所属するサークルのOBです。数年前の同窓会でAさんとBさんは知り合い、その後、親交を深めるようになりました。
 Aさんは、Bさん夫妻が最近東京郊外に家を建てたと聞きました。お話を伺ったところ、最寄り駅までバスで15分の閑静な住宅地で、周辺環境は、一級河川の支流がさらに枝分かれするように丘陵地帯に入りこむアップダウンの多い地形をなしているそうです。近所には野菜畑を営む農家もたくさんあり、3~4km歩けば里山風景や未開拓の自然山林もあります。なんでも、Bさん夫妻は数年前にひょんなことから文献1~3に出逢って感銘を受け、それまでの都心のマンション暮らしとは環境が異なるこの地に家を建て、移り住むことにしたというのです。
 このような環境のなかで暮らすのは初体験なので、自分たちらしい住まいかた・暮らしかたを模索しつつあるとのこと。Bさんは、最近、とある文学賞にノミネートされ注目されている小説家です。Bさんの妻(50代前半)は彫刻家で、アトリエとなる小屋を近くの農家から借りたそうです。二人とも基本的に在宅ワークです。
 親しい知り合いのそんな話を聞くと、建築の学生として居てもたってもいられません。Aさんも文献1〜3を読んで同じく強い感銘を受けました。さらにその過程で文献4~6にも出逢いました。6つの文献を俯瞰し、自身の研究にひきつけて考えた結果、研究のやりかたを見直そうと決心しました。これまでは室内環境だけに目を向けた研究をしてきましたが、より広い視座や多様な着眼点からひとの住まいかた・暮らしかたを探究する必要があると痛感したのです。
以下の2つの問いに答えてください。

設問6(a):
この新しい土地で、Bさん夫妻の住まいかた・暮らしかたはどのようなものになりつつある、あるいはこれからなっていくとあなたは考えますか?できるだけ具体的に記してください(300字以内) 。

設問6(b):
Aさんは、Bさん夫妻の住まいかた・暮らしかたがどう変化していくのかに興味を抱き、住まいかた・暮らしかたのありさまを詳細に調査させていただく了承を得ました。
 ただ、とても難しい研究になりそうであるとAさんは直観しています。Bさん夫妻が触発された文献にAさんも触発されたということもあって、Bさん夫妻がどのような住まいかた・暮らしかたをつくりあげていくのかについて、Aさんは共感的に想像することはできます。しかし、Bさん大妻の住まいかた・暮らしかたが実際にその通りになると仮定して研究方法を計画するわけにもいきません。
 Bさん夫妻の住まいかた・暮らしかたのありさまを調査するために、Aさんがどのような工夫を盛り込んだ研究方法を考案するであろうとあなたは考えますか?できるだけ具体的に記述してください(500字以内)。

慶應義塾大学 環境情報学部2023年【答案例】

設問1

 人間はもともと自然の中で、創造的で柔軟な暮らしを営んできた。しかしいつしか、技術や道具、システムを発展させていく中で、創造性や柔軟さを失ってしまった。文献1と文献2ではこのような、システム通りに行動し続けることで、自然との対話に基づいた生活を失っていることへの問題意識が通底している。(142字)

設問2

 「生き延びるため」のものは一般化されたレシピのように、社会的に正しいものだが、詩や料理において本当に美しいとされるのは、その人の悟性に基づいて選択された「生きる」ためのものである。文献1と文献3ではこのような、社会的に一般化された価値のあるものではなく、これまでの経験に基づいてなんとなく選ばれたものが真に美しいのだという考えが通底している。(171字)

設問3

 定量的な研究というのは一般的に価値がわかりやすく、それゆえに発展してきた。しかし、定量的な研究はすでに発見された自然の性質のみを扱うことができ、自然界の未知の性質を発見することはできない。したがって定量的な研究で得られた数字がどれほど本質的なのかはわからない。このように、わかりやすい価値の基準で選ばれたものは、文献3にもあるとおり、常に最適なものであるとは言えない。定性的研究はこのような真の価値を発見する上で、定量的研究以前に大切な研究にだと言える。(227字)

設問4

 リアルとは本来、システムや言葉を介してではなく、自分とそれ以外とが直接的に作用しあって出来上がっているのである。つまり、リアルや知能というものはそれ単品では存在せず、常に環境との関わりの中で形成され、それをシステムや言葉で制御するのは難しいという点で、文献2と文献5は共通している。(141字)

設問5

 「生きることに向き合う学問的態度」とは、言葉や数字といった科学における強力な武器だけで真実を解明しようとするのではなく、物事の多様な関わり方を紐解いていこうとすることであり、自然界との直接的な関わりを理解しようとしている。一方で、文献4で述べられる定性的な研究では、自然界との生の関わりから、自然界の未知の性質を紐解こうとしており、その点で共通する。また、文献4では定性的な研究が定量的な研究の発展につながるとされており、このことは定量的研究であった人工知能の研究にも当てはまるものである。(245字)

設問6(a)

 Bさん夫妻の住居は自然と融合したものとなると考える。文献2にでは、自然と区切られたシステムの中では生きることを見失ってしまう危険性があり、あくまでも社会は自然との関わりの上に成り立っていることが指摘されている。また、文献1や文献3にある通り、本当の豊かさは自然との直接的な関係の中に生まれ、社会的な豊かさとは異なる。一方で、Bさん夫婦の仕事はこの本質的な豊かさが重要になるものであり、新しい住居は未開拓の自然に囲まれた場所にある。これらのことから考えると、Bさん夫婦の生活は、社会から離れ、自然との生の関わりの中で、自らの創造性につながる豊かさを追求するものになっていくことが予想される。(294字)

設問6(b)

 文献4や文献5によると、数字や言葉での研究には限界があり、本質を見抜くためには、自然界との関わりを観察する必要がある。これを満たすためには以下の工夫が考えられる。

 まず、定性的な研究を行うために、Bさん夫妻の作品の変化を観察する。これらの作品は言葉それ自体のみではなく、文脈や形状といったさまざまな種類の情報が含まれるため、定性的な研究に向く。また、インタビューなども、文面のみでのやり取りではなく、直接会って話を聞き、仕草や表情などにも注意することで、新しい暮らしの本質的な価値に気づけるだろう。

 次に、自然との関わりを注意深く観察することが挙げられる。Bさん夫妻が日々どこを歩き、どんな生き物と出会い、何を食べたのか、さらにはその日の天候など、さまざまな側面から観察する。これによりBさん夫妻のリアルを記録できるだろう。

 これらの二つの工夫を比較することで、自然界とBさん夫妻との関わりが、自分とBさん夫妻との関わりにどう影響したかがわかり、本質的な価値を見つけられる。以上より、文献などの知見から、Aさんはさまざまな側面を注意深く観察する工夫を盛り込んだ研究を考案すると考えられる。(491字)

慶應義塾大学 環境情報学部2023年【解説】

全体方針

 時間配分がとても難しいです。合計1800字も書かなくてはならない上、文献も5つあります。さらに設問を読むと、どれか一つの文献のみを集中して読めばいいという話ではなく、すべての文献を網羅的に読むことが求められます。したがって、少ない時間でこれらの文献を整理するために、まずすべての文献をざっくりと読んで文構造とテーマのみを拾い、共通点がありそうなところを丁寧に読んでいくという方針が立てられます。例えば文献1であれば、

  • 料理がテーマ
  • 家庭料理とその他の料理の対比
  • 自然との関わり

くらいの情報が読み取れれば十分です。これらの情報は大抵文の始まりと終わり、それから見出しを読むとわかります。まずこれらの情報を各文献から15分程度で抜き出してくる作業を行い、それから対応する箇所を精読するようにしましょう。

設問1

 のっけからなかなかの難易度です。文献1と文献2はどちらも自然とシステムの対比から、自然との正しい関わり方が述べられています。文献1ではシステム化された料理のレシピではなく、自然とのやり取りから生まれる悟性を使って料理をするべきだということが、文献2では社会のシステムそのものが自然界のリアルの上に成り立っていることが書かれています。短い字数なのであらかじめ字数配分にも気をつけながら書きましょう。

設問2

 文献1と文献3では、一般的、社会的なもの(レシピや霜降りステーキの価値)と経験に基づいたなんとなくの直感との対比から、真の美しさを定義しています。設問1と同様に字数配分に注意しましょう。

設問3

 まずは文献4で述べられている定性的研究というのが何かをきちんと理解しましょう。定量的研究では自然界を数字で評価しますが、それが本質を捉えているとは限りません。例えば教育の価値は学力だけでは測れないように、定量的研究のみでは自然界を正しく解釈できません。観察に基づいてそういった自然界の特性を見つけるのが定性的研究です。この定量的研究と定性的研究の対比は文献3の社会における価値と詩における価値の対比と対応します。設問1と設問2よりは字数に余裕があるので、拾うべき要素をきちんと拾って書くようにしましょう。

設問4

 人工知能とは言葉を用いた技術ですが、一方で言葉を用いていないコミュニケーションも重要です。話し手の存在そのものや言葉が生まれた背景、話し方など、形式的な言葉だけではないより直接的な関わりが大切だということが文献5では述べられています。これは文献2の「このリアルは、システムという装置や媒体を介してではなく、自己の身体と他の生きものや人たちのそれらが生身であいまみえ、交感するなかで、時間をかけて形成されるものだ。」と共通する部分があるので、そのことについて書きましょう。

設問5

 「生きることに向きあうための学問的態度」をまずは定義しましょう。人工知能などの定量的な研究では数字や言葉など、社会的に価値のある強い力を使います。一方で数字や言葉で表現できないものを切り捨ててしまう部分もあるのです。そこで定性的研究を用いてそういった切り捨てられてしまう部分を拾っていくことが大切なのです。

設問6(a)

 ここまで文献がきちんと読めていればそれほど難しくはありません。設問で細かく与えられている、Bさん夫妻の情報に注目しましょう。彼らの住まいは都会から離れ自然に囲まれた場所にあります。近所の農家のように、自分たちで野菜を作れるかもしれません。文学や彫刻は文献2の詩的な価値観と通じる部分があるかもしれません。これらの情報と文献を結びつけて予測を立てるようにしましょう

設問6(b)

 まず文献4にしたがって、定性的研究を行う趣旨を書きましょう。その上で、定性的研究を行うにはどのようにすべきかを考えます。言葉や数字に頼った調査を行うと正しく研究を行えません。文献1〜3などによると、そのような一般的でない価値というのは、自然や他人との直接の関わりで得られることがわかります。したがって、Bさん夫妻の他との直接的な関わり方を調査できる工夫を考えるようにしましょう。字数制限も厳しいので、書き始める前にはアウトラインをきちんと書くようにしましょう

慶應義塾大学 環境情報学部2023年【講評】

 時間が足りないです。SFCの中でもかなりの難易度だったのではないでしょうか。昨年度までの、課題発見、解決型の小論文とはだいぶ毛色が異なり、文章読解力や抽象的概念の理解が求められます。環境2020や環境2012などと合わせて学習すると良いと思います。まずは時間内に書き切れることを目標に頑張りましょう。

なお、慶應義塾大学環境情報学部2023年の別解は、下記よりご覧ください。

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ABOUT ME
hiroken
2021年に慶應義塾大学の環境情報学部に入学したヒロケンです。教育やデータサイエンスに興味があります。受験では小論文の対策を中心に、SFCに特化した対策を行うことで、英数受験でSFC両学部に合格することができました。私が実践してきたSFC対策をぜひみなさんにお伝えしていきたいなと思います。

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