慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 総合政策学部(2023年) 答案例・詳細解説

慶應SFCインテンシブコース

慶應義塾大学 総合政策学部2023年【問い】

【問1】 文章①~④のうち、少なくとも3つに具体的に言及し、大学での学びにおいて重要だと考えるものについて600文字以内で論ぜよ。それぞれの文章の内容に賛成する必要はない。批判的検討は常に重要であり、反論も歓迎される。問1の冒頭の欄に直接言及する文章の番号を必ず記入すること。

【問2】 文章①〜④を踏まえ、
(ア) 問2の冒頭の欄に、社会における「知」として最も重要だと考える要素や役割を簡潔に示せ。
(イ) そのうえで、今日の世界における政策ーー日本でも海外でもよいーーの具体的事例を2つ挙げ、(ア)で示した「知」がどのように活かされているか、あるいは活かされていないかを含め、800文字以内で論ぜよ。その際に、文章③ないし④(あるいは両方)に具体的に言及することが望ましい。

慶應義塾大学 総合政策学部2023年【答案例】

問1

①③④

大学での学びにおいて重要なのは、自分の頭で考え、批判的に検討することだ。ミルは「知識の体系化」の重要性を説き、既知から未知へ進む方法を学ぶべきだと主張する。しかし、ショーペンハウアーが指摘するように、ただ読書するだけでは自分で考えることなく他人の思考をなぞるだけであり、精神は麻痺してしまう。バイヤールも、読書には「偽善的態度」が付きまとうと論じ、本を読まずに語ることの意義を示唆している。つまり、大学では知識を鵜呑みにするのではなく、批判的に吟味し、自分の言葉で思考を展開する力を養うことが肝要なのだ。

重要な点は、読書の「質」であって「量」ではない。ショーペンハウアーは、悪書は知性を毒すると断じ、古今東西の名著を熟読玩味すべきだと説く。読書の要諦は、ただページをめくることではなく、熟読することにある。バイヤールも、本を読まずに語ることの価値を強調し、表層的な読書を戒める。大学では膨大な文献に触れる機会があるが、安易に手を出すのではなく、厳選した良書を深く読み込み、著者の思考と対話することが大切だ。読書とは知的格闘であり、その過程で養われる論理的思考力や批判的精神こそが、主体的な学びの基盤となるのである。
(598字)

問2

(ア)社会における「知」の重要な役割は、現象の本質を見抜き、批判的に吟味することで、より良い社会の実現に貢献することである。

(イ)
社会における知の重要性を踏まえると、政策立案においてもその活用が不可欠だ。しかし現代日本の政治を見ると、知が十分に生かされているとは言い難い。その典型例が、アベノミクスだ。異次元の金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略という「三本の矢」を掲げたが、所得の伸び悩みや財政悪化などの弊害が指摘されている。ショーペンハウアーの言葉を借りれば、政策立案者は「他人の考えを押しつけられ」、「自分の頭で考える能力」を失っているのではないか。本来なら専門家の知見を批判的に検討し、政策の是非を判断すべきなのに、そうした姿勢が見られない。

一方、知を政策に活用した好例が、ドイツのエネルギーヴェンデだ。脱原発・脱化石燃料を目指し、再生可能エネルギーの大幅な導入を進めている。重要なのは、政策転換の根拠となった「倫理委員会」の存在だ。科学者、経済界、市民社会など幅広い有識者が議論を重ね、エネルギー政策の規範的なビジョンを打ち出した。ここには、ショーペンハウアーが重視した、多様な意見に触れつつ「自分の頭」で考える姿勢が表れている。バイヤールの言葉を踏まえれば、「本当に本を読んでいるかどうか」が問われるのではなく、知の実質的な吟味と活用が図られたと言えよう。

日本の政策課題は山積している。少子高齢化、地方創生、デジタル化、防災など、複雑な課題に直面する中で、私たちに求められるのは、知の重要性を再認識することだ。ショーペンハウアーが説くように、「他人の考えをなぞる」のではなく、自ら思考する習慣を身につける必要がある。そしてバイヤールの指摘も踏まえ、知の実質的な理解と活用を目指すべきだ。知は単なる飾りではない。社会の諸問題の本質を見極め、より良い未来を切り拓く営為なのだ。その意味で、本質を見抜く知性と、知を行動に移す勇気が、これからの時代には何より重要になるだろう。
(798字)

慶應義塾大学 総合政策学部2023年【解説】

慶應義塾大学総合政策学部2023年の小論文について解説します。今回の課題文は、大学での学びと読書についての4つの文章が提示され、それらを踏まえて自身の見解を論じることが求められています。

問1の解説

まず問1では、4つの文章のうち少なくとも3つに言及しながら、大学での学びにおいて重要だと考えるものについて論じます。ミルは知識の体系化の重要性を説き、ショーペンハウアーは自分の頭で考えることの意義を説きます。一方、バイヤールは読書への偽善的態度を指摘しています。これらの主張を踏まえると、大学での学びにおいては、知識を鵜呑みにするのではなく、批判的に吟味し、自分の言葉で思考を展開する力を養うことが重要だと言えます。

また、ショーペンハウアーが説くように、読書は質が大切であり、古今東西の名著を熟読玩味することが肝要です。バイヤールも、本を読まずに語ることの価値を示唆しており、読書とは著者との知的格闘であると言えます。したがって、大学では厳選した良書を深く読み込み、自らの思考を鍛錬することが求められると論じることができるでしょう。

問2の解説

次に問2の(ア)では、社会における「知」の役割について、自分の考えを端的に述べます。知とは、単なる情報の集積ではなく、現象の本質を見抜き、より良い社会の実現に資するものだと定義づけることができます。

問2の(イ)では、(ア)で述べた知の役割を踏まえつつ、具体的な政策事例に即して論じます。日本の政治では、アベノミクスのように専門知が十分に活用されていない事例が見られます。政策立案者は批判的な視点を欠き、他人の意見に流されているように見受けられます。一方、ドイツのエネルギーヴェンデは、多様な有識者の議論を経て方向性が定められた好例です。ショーペンハウアーの言葉を踏まえれば、自分の頭で考える姿勢が表れていると評価できます。

私たち日本は今、少子高齢化など複雑な課題に直面しています。こうした中で求められるのは、ショーペンハウアーが説くように、「他人の考えをなぞる」のではなく、自ら思考する習慣を身につけることです。また、バイヤールの指摘も踏まえ、知の実質的な理解と活用を目指すべきです。知は社会の諸問題の本質を見極め、より良い未来を切り拓く営為だと言えます。私たちには知性と勇気が求められていると論じてまとめることができるでしょう。

総評

肝心な点は、設問の要求をしっかりと把握し、論理的な文章で過不足なく答えることです。各段落の冒頭にはトピックセンテンスを置き、主張とその根拠を明確にします。課題文から必要な情報を引用しつつ、知識をオリジナリティのある文章で再構成し、知的な会話を重ねるように論を展開し、結論で全体を統括する。こうした基本を意識しながら、設問と対話するような姿勢で臨めば、受験生の皆さんも必ず論理的な小論文を書けるはずです。

受験勉強は知的な探究の絶好の機会です。古今東西の名著に触れ、著者の思考と格闘する。それは決して容易な作業ではありませんが、だからこそ面白い。皆さん一人ひとりが、知の探究者として成長していかれることを願っています。

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ABOUT ME
Kaz
2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人&慶應SFCインテンシブコースの責任者です。志望大学合格に向けて、受験生を全力でサポート致します!

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