この記事の目次
慶應義塾大学 環境情報学部2012年【答案例】
問1
私が印象的な関わりを持った生活用品はScanSnap(スキャナー)及びそのクラウド連携システムである。具体的にはスキャナー本体は2LペットボトルほどのサイズでありながらA4サイズまでの書類を20枚程度一気に両面スキャンできたり、レシートや名刺などを素早くスキャンし、記載事項をデータ化できたりする。スキャンが完了すると登録していたクラウドサービス(EvernoteやDropboxなど)で閲覧可能となる。こうした機能のおかげで、私は身の回りにあるあらゆる書類をいつでもどこからでも閲覧できるようになり、非常にストレスが軽減された。例えば、授業中に配布されたプリントを、テスト期間に通学中、スマホからすぐに確認できたり、名前を検索するだけで名刺が探せるようになったりした。こうした体験が得られたのは、スキャナーがスキャンすることだけに特化していながら、スキャンしたその先をユーザーに寄り添い考えられて設計されているからである。以前からプリンタに付属していたスキャナを利用していたが、スキャン専門で設計されたものは利便性が全く違った。セットしてボタンを押すだけで良いというのは、機能をミニマルにした恩恵を最大限に享受していると言えるだろう。
問2
スキャナーは、旧来の、紙を利用してあらゆる書類を保存・共有するというスタイルに制約を受けていると言える。現在まで紙が使われている主な理由としては、セキュリティ面、唯一性、手触り、書き込みやすさなどが挙げられる。例えば、紙面に印刷された情報は直接サイバー攻撃を受けない。また、紙の手触りは現在の技術では再現が難しく、あらゆる筆記具ですぐさま書き込めるなどの特徴から根強い人気を誇っている。逆に考えれば、こうした利点を新しい技術によって上回ればそれが紙を代替していく可能性がある。そこで私は手触りも触り心地も再現された電子ペーパーを提案したい。現時点で、セキュリティ面、唯一性を担保するような技術であるブロックチェーンと、紙のように曲げることができるディスプレーを実現できる有機ELは存在している。また、紙のように反射がない電子インクディスプレーもすでに普及している。そして、現在バイオの世界では人間の触感を科学する領域がある。よって、これらの技術を複合し発展させれば紙に限りなく近い電子ペーパーも実現できるのではないだろうか。これをスーパーペーパーと呼ぶことにする。電子的に動作するのに、紙用あの鉛筆やペンがそのまま使え、触り心地も紙であるという利点を持つ。さらに、そこに書かれた情報はクラウドに保存されるから、スーパーペーパー1枚さえ持ち歩いておけば事足りる。NFTの応用により、印鑑や筆跡による本人確認技術も極めて正確に行える。スキャナーは元々、先述した紙を使う理由から電子化されていなかったものを電子化するための道具だった。しかし、スーパーペーパーの登場により、その役目を終えると考えられる。
慶應義塾大学 環境情報学部2012年【解説】
問1
まず、慶應義塾大学環境情報学部・総合政策学部(慶應SFC)の問題は、問いがいくつかあったときに、互いに関連していることがよくあります。
そのため、最初の問いを見て答えたくなっても、問いが何問あるのか、この先にどのような問いが続くのかを把握しておく必要があります。
今回の場合は、問いは2つで、問1で挙げた例を用いて問2を答える形式となっています。
確認が終わったところで、本問に取り組んでいきましょう。まず「印象的な関わりを持った生活用品」を挙げなければなりません。頭の中にパッと思いつく人はいくつかメモしてみましょう。
ここで、どうしても思いつかない……という場合は朝起きてから夜寝るまでの自分の生活を時間軸で振り返ってみるのがおすすめです。というのも、慶應義塾大学環境情報学部・総合政策学部(慶應SFC)の小論文は課題解決能力を問うものが多く、その中で身の回りの課題を見つけるテーマも見受けられるためです。
僕の場合なら、iPhoneやMacBook、スキャナー、メガネ、コンタクトレンズなどを挙げました。
スマホやパソコン、メガネは比較的メジャーで他の受験生と被りそうだという懸念があったため、受験者の年齢層的に利用者が比較的少なそうなスキャナーをテーマにすることにしました。
テーマが決まったら、
- それがどのようなものであったか
- あなたがそれを通じてどのような体験をしたか
- なぜそのような体験が得られたか
を必要十分になるように説明してください。
問2
続いて、問1で挙げた生活用品がどのような制約を受けているのかなどを説明していきます。そして、私たちを取り巻く環境がどのように変化するかを考え、それゆえにどのような生活用品が開発されるのではないかと考察していきます。
僕の場合は、電子ペーパーの技術は既存のものの応用で、触感に関する技術については僕の知る限りでは現在発明されていないが、将来的に出てくるだろうと予測して綴りました。
自分が知っている知識を使いつつ、自由な発想も取り入れられるとより説得力があり、かつSFCらしい文章になるのではないかと思います。
ちなみに近年流行している技術で皆さんにもぜひ知っておいてほしいものは、こちらの記事でわかりやすく解説していますので、ぜひ目を通しておいてくださいね。
まとめ
今回は、プロダクトデザインがテーマでした。
普段生活していて「印象的な関わりを持った生活用品」などと言われても、パッと思いつかなかったかもしれません。
ですが、丁寧に自分の日常を振り返るとアイディアが出てくることがあると思います。
SFCは環境情報学部、総合政策学部関わらず日常生活に関わる問題を出すことが多いですから、普段から問題意識の解像度高く生活していただけたらと思います。
応援しています。