慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 総合政策学部2021年 答案例・詳細解説【別解1】

解答例

慶應SFCインテンシブコース

問1 

【A】

実施された政策:パートナーシップ制度

目的:同性カップルの関係を公的に認めること

制度:婚姻制度、カップルは異性同士によるものとする価値規範

アクター:LGBT当事者、市民・有権者、議員、企業

 

①LGBT当事者

(利益)税制面など、公的なサポートを受けることができること

(理念)LGBTについての社会からの理解が得られるようにしたい

②市民・有権者

(利益)公的なサポートを受け、安定した生活を営むこと

(理念)生活環境を脅かす要素を排除し、快適な生活を営みたい

③議員

(利益)有権者による票を獲得し、選挙に当選すること

(理念)有権者の声を議会で提案し、政策を実現させること

④企業

(利益)ヒト、モノ、カネのコストを削減すること

(理念)会社の利益を最大化すること

 

【B】

実施された政策:ウルグアイ・ラウンド交渉

目的:自由貿易体制への参加

制度:自由貿易を基調とする世界秩序、関税、食料自給率を高めたいという世論

アクター:WTO、内閣、都市系議員、農政派議員

①WTO

(利益)自由貿易体制の拡大
(理念)市場の自由化を進め、自由競争を推進したい
②内閣
(利益)WTOおよび関係諸外国と友好な関係を気づくこと
(理念)支持率を一定に保ち、安定して政権を運営したい
③都市系議員
(利益)コメの価格を下げ、都市圏有権者の支持を獲得すること
(理念)市場の自由化を進め、自由競争を推進したい
④農政派議員
(利益)国内の農家を自由競争から守り、支持を獲得すること
(理念)国内の農家を自由競争から守りたい

 

【C】

実施された政策:保育園の増設

目的:待機児童問題解消

制度:保育園についての法制度、子どもは大切なものだという価値規範

アクター:子供の親、既存の保育団体、新規の保育園、地域住民

①子供の親

(利益)子どもを保育園に預け、仕事に集中すること

(理念)仕事と子育てを両立したい

②既存の保育団体
(利益)既存の利益を守ること

(理念)保育の質を下げたくない
③新規の保育園

(利益)保育園を増設し、待機児童を減らすこと

(理念)待機児童問題を解決し、働くことと子育ての両立を支援したい

④地域住民
(利益)騒音に生活を営むこと

(理念)静かに暮らしたい

 

問2

【A】

問3

 日本において同性婚の議論が進んでいないという課題については、その根本的な問題として、同性婚、パートナーシップ制度の対象にならない非当事者にとって、制度の導入についての負担が大きいことが一つとして挙げられる。このことを、当事者、市民・有権者、議員、自治体・企業の4つのアクターそれぞれの観点で分析する。

 まず、当事者については、彼らにしかわからない暗黙知が非当事者に共有されないことがある。当事者の心情や考えなどがわからなければ、当事者と非当事者の間に断裂が起き、導入についての議論の妨げになりうる。

 そして、市民や有権者、議員はそうした断裂から、制度の導入が自身の利益に結びつくこと、あるいは社会のために必要であるという認識を持ちづらく、「対岸の火事」のような態度をとってしまうだろう。

 また、自治体や企業においても、同性カップルの権利を認めることは、利益追求という点では負担になる。

 では、以上の問題を解決するにはどうすればいいのか。まずは、非当事者と当事者の間にある断裂を解消すること、すなわち情報の共有を行うことが重要であると考える。そのために、5つ目のアクターとしてマスメディアを登場させる。マスメディアにより、当事者についての情報や、なぜパートナーシップ制度の導入が必要なのかを非当事者に発信することで、非当事者であるマジョリティの間に議論の土壌が涵養される。そして、市民、有権者の間で問題意識が高まれば、それはやがて自治体や企業への働きかけ、意見に繋がるだろう。そうすれば、企業や自治体は対応せざるを得ない。

 こうして、当事者、市民・有権者、議員、自治体・企業の4つのアクターにマスメディアを加えることで、同性婚の議論を漸進させることができるだろう。そのためには、何よりマスメディアによる丁寧で責任ある情報発信、そしてそれを正しく受け取るメディアリテラシーが一人一人に求められる。(797字)

 

解説

問1

・当然、アクターは解答例以外にも存在します。

・利益と理念をどう区別するか難しいですが、お金になるものが前者であると考えるとわかりやすいでしょう。

・理念については、それぞれ物事に関するあるべき状態について「〜したい」という欲求を基調として書いています。

 

問2

 まずはアクターごとに原因を分析し、そしてそれを資料にあるアローダイアグラムの形式に沿って並べましょう。解答例では描かれていませんが、アクター同士に関係がある(因果関係がある)と考えた場合は、それを追記しても良いでしょう。

 

問3

 問2で課題の構造を浮き上がらせましたが、まずは課題の詳細をアクターごとに説明し、そしてそれに沿って解決策を提案すると、構造的でかつ説得力のある答案になります。今回の答案では、4つのアクターに働きかける外側のアクターとしてマスメディアを登場させましたが、このほかにも解決策は存在します。唯一の正解ではなく、答案の筋のわかりやすさや論理性を重視した問題であると言えます。

 

講評

 課題や資料に沿って解答する問題が大部分であり、自身の問題意識などを問われている問題ではありませんでしたが、日頃から問題の構造を分解し、整理して考える習慣があるかどうかがチェックされていました。アローダイアグラムで物事を捉えることはSFCが掲げる問題発見、問題解決のためには必要ですので、添削を受け、しっかりと復習しましょう。

なお、慶應義塾大学 総合政策学部(2021年)の回答例別解2もご覧いただき、学習の参考にしてください。

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ABOUT ME
いりす
慶應義塾大学総合政策学部2022年卒。AO入試C方式合格。文学・哲学・社会学を勉強していました。小論文のトリセツのお姉さん。

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