慶應SFC小論文 過去問答案例・解説

慶應義塾大学 総合政策学部(2021年) 答案例・詳細解説【別解2】

慶應SFCインテンシブコース

慶應義塾大学 総合政策学部2021年【問い】

【問題】
ここまで、課題を捉えるための道具と考え方を示してきました。よりわかりやすく考えられるように、具体的な実例を用意しました。これを題材として問題に挑んでみましょう。

次のページから、 政策の事例が3 つ、ケース【A 】~ [ C ] として示されています。【A 】は政治、【B】は外交、【C】は社会における実例です。事例の内容が分かりやすいように新聞記事と当事者の証言を組み合わせています。新聞記事は事例の全体像を理解することに役立つでしょう。当事者の証言はいずれも躍動感に富む体験談ですが、同時にここで語られていないことも、本人が気付いていないこともあるでしよう。
以下、上述したツール【1 】〜【3 】を用いて、課題を構成する要素を見出して整理し( 問 1 ) 、 課題の構造を描き出し( 問 2 ) 、 その実践を改善するための具体的な提案( 問 3 ) を行ってください。

問1 課題を構成する要素を見出し、整理する
ツール【 1 】 を読んだうえで、 ケース【 A 】 ~ [ C ] それぞれについて、 実施された政策とその目的を記し、 アクターを書き出してください。 アクターは主要なものを4 つまで書くことができます。そのうえでアクターごとに、それぞれが持つ利益、理念を書き出してください。そして、それらはどのような制度のもとで動いているかを記してください。
ケース【A】~ 【C】は新聞記事と当事者の語りですから、記者や本人が見えていない、
語っていないこともあるでしよう。そうした「書かれていないこと」があればそれも含めて、みなさんが重要だと考えるものを書き出してください。

問2課題の構造を描き出す
ツール【 2 】 を読んだうえで、 ケース【 A 】 ~ [ C ] のどれか 1 つを取り上げて課題の構造を図示します。まず、取り」二げるケースの番号• 名称にOをしてください。そのうえで、そのケースに潜む本質的な課題を見出し、どのような課題としてフレーミングすべきかを考え、それを示すタイトルを自分のことばで記してください。そのうえで、課題の構造をアロー • ダイアグラムの形式で描いてください。その際、問1 で書き出した要素を考慮して、より現実に即したものになるよう心掛ftてください。

問3課題を解決する方法を示す
問2 で取り上げた課題について、ツール【3 】を参考に、システム思考の観点に立った改善の提案を論じてください。その際、問1 、問2 を踏まえて、誰が何をするかを具体的に記してください(800字)。

慶應義塾大学 総合政策学部2021年【答案例】

問1

ケース【A】パートナーシップ政策
実施された政策とその目的: 同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」。同性カップルの権利を保護し、多様性を尊重する社会を目指す。

アクター1: 同性カップル
利益: パートナーシップの法的保護、差別の解消
理念: 多様性の尊重、平等な権利
制度: 現行の法律では同性婚は認められていない

アクター2: 自治体
利益: 多様性を尊重する地域社会の実現

理念: 住民の人権を守る責務
制度: パートナーシップ制度条例の制定

アクター3: 国会議員
利益: 支持者の意向に沿った政策立案
理念: 個人の政治理念、所属政党の方針
制度: 国会における法改正の審議プロセス

アクター4: 世論
利益: 多様な価値観の共存
理念: 平等や人権尊重などの社会規範
制度: 世論の影響力を持つメディアや世論調査

ケース【B】国際貿易政策
実施された政策とその目的: ウルグアイ・ラウンド交渉妥結によるWTO設立とコメ市場の部分開放。自由貿易体制の強化と食糧管理制度の転換。

アクター1: 日本政府・与党
利益: 国際的な貿易ルールへの対応、国内農業の保護
理念: 自由貿易の推進と食料安全保障のバランス
制度: 国会での承認手続き、関連法案の整備

アクター2: 農業団体・農家
利益: 国内農業・農家の保護
理念: 食料自給と農村社会の維持
制度: 農業関連の補助金制度や減反政策

アクター3: 経済団体・企業
利益: 貿易自由化による経済的恩恵
理念: 自由競争と市場原理の重視
制度: 国際的な貿易ルールや紛争処理手続き

アクター4: 消費者
利益: 安価で多様な商品の入手
理念: 消費者の選択肢の拡大
制度: 食料品アクセスに関わる流通規制

ケース【C】待機児童政策
実施された政策とその目的: 小規模保育事業の導入や保育の受け皿拡大。待機児童の解消と女性の社会進出の促進。

アクター1: 待機児童の親
利益: 保育園に入所できること
理念: 子育てと就労の両立
制度: 保育所入所の選考基準、育児休業制度

アクター2: 保育事業者
利益: 事業機会の拡大
理念: 保育の質の維持と向上
制度: 認可基準、補助金制度

アクター3: 自治体
利益: 待機児童の解消、住民の福祉向上
理念: 子育て支援、女性活躍の推進
制度: 保育所整備計画、財政支援措置

アクター4: 国会議員・中央省庁
利益: 少子化対策、女性の社会進出促進
理念: 政権の政策目標、議員の政治姿勢
制度: 子ども・子育て支援法などの法整備

問2

取り上げるケース: ケース【C】待機児童政策
アロー・ダイヤグラム

問3

待機児童問題の解決には、国、自治体、保育事業者、そして社会全体による総合的なアプローチが不可欠だ。なぜなら、この問題は保育制度の複雑な構造的課題に起因しており、単一の主体や一面的な取り組みでは根本的な解決が望めないからだ。具体的には、国による財政支援と制度の柔軟化、自治体主導の戦略的な保育所整備、保育事業者の効率的な運営と保育士の処遇改善、社会全体での意識改革と協働が求められる。

国は、子ども・子育て支援法の理念に基づき、自治体への財政支援を強化すべきだ。それにより、地域の実情に即した多様な保育サービスの提供が可能になるからだ。例えば、認可保育所の基準見直しや、小規模保育事業の制度化などを通じて、自治体が柔軟に保育受け皿を整備できるようにする必要がある。

自治体は、国の支援を最大限に活用しつつ、地域の保育ニーズを丁寧に汲み取り、きめ細やかな保育所整備計画を推進しなければならない。待機児童の実態を踏まえた戦略的な取り組みこそが、問題解決の鍵を握るからだ。例えば、待機児童数や保育需要の将来予測に基づいて、適切な規模と立地の保育所を整備することが肝要だ。

保育事業者は、質の高い保育サービスを安定的に提供するため、効率的な運営体制の構築と保育士の処遇改善に注力すべきだ。それには、行政との緊密な連携が不可欠だ。例えば、補助金等を活用した保育施設の整備や、ICTの導入による業務の効率化などに取り組む必要がある。加えて、国と自治体は、保育士の育成と確保に資する施策を強化し、保育現場の持続可能性を高めるべきだ。

慶應義塾大学 総合政策学部2021年【解説】

こんにちは。今回は、慶應義塾大学総合政策学部の小論文問題を解説します。大きく分けて3つの問いがありましたね。問1では課題の要素を整理する力、問2では課題の構造を描き出す力、問3では課題解決のための政策を提案する力が問われていました。

SFCが求める課題解決能力とは

SFCの小論文では、社会の複雑な問題に対して、多角的な視点から分析し、創造的な解決策を提示する能力が問われます。単に知識を披露するだけでは不十分で、問題の本質を見抜き、自分なりの考えを論理的に述べることが重要です。

今回の問題では、政治、経済、社会保障など、様々な分野の具体的な事例が取り上げられていました。どの事例も一筋縄ではいかない難しい問題ですが、そこに挑む態度こそがSFCの学風と言えるでしょう。

問1の狙いと解答のポイント

問1は、事例に登場する様々なアクターを整理し、その利害関係を把握する問題です。登場人物を羅列するだけでなく、それぞれの利益、価値観、置かれた制度的制約を適切に読み取ることが求められました。

解答のポイントは、アクターを単に立場の異なる者として捉えるのではなく、構造的視点から関係性をとらえることです。例えば、立法府と行政府、国と地方、企業と消費者といった対立軸を見出し、制度や社会規範がそこにどのような影響を与えているかを考察します。

また、自分が気付いていない無言のアクターを想起することも重要です。例えば、将来世代やマイノリティ、自然環境といったステークホルダーは見落とされがちですが、持続可能な社会を考える上では不可欠な視点と言えます。

問2の狙いと解答のポイント

問2は、問題の背景にある因果関係を構造的に描き出す力が試されています。因果ループ図を用いて、問題を引き起こす要因と、問題がもたらす影響を関連付けて表現する必要があります。その上で、問題の本質を見抜き、解くべき課題を適切にフレーミングすることが求められます。

解答のポイントは、教科書的な知識の適用ではなく、自分なりのクリティカルシンキングを働かせることです。提示された事例から本質的なメカニズムを読み解き、わかりやすく図解する力が問われているのです。

また、ダイアグラムを描くことは、論点を可視化し、複雑な問題を シンプルに整理するのにも役立ちます。課題の全体像を示すことで、議論の対象を焦点化し、説得力のある主張につなげることができるのです。

問3の狙いと解答のポイント

問3は、問題解決に向けた実践的な政策提言が求められる問題です。システム思考の観点から、問題の構造的要因に働きかけ、持続可能な解決策を示す必要があります。その際、各ステークホルダーの行動変容を促すインセンティブ設計にも留意が必要です。

解答のポイントは、提言の論拠を明確に示すことです。なぜその政策が有効なのか、根拠を示しながら主張を展開しましょう。その際、机上の空論ではなく、実現可能性も意識することが大切です。

また、個別の政策だけでなく、社会の意識改革や各主体の協働を促すビジョンも重要です。制度、財源、人材、文化など、様々な側面からアプローチし、問題解決への道筋を多面的に論じることが求められます。

小論文で評価されるのは、知識の量ではなく、知識を活用して課題解決する力です。与えられた問題の背景を読み解き、創造的なアイデアを提示する。それがSFCの望む人材像なのです。日頃から社会課題に向き合い、自分なりの問題意識を培っておくことが何より重要でしょう。

今回の問題を通じて、皆さんには複雑な社会課題と真摯に向き合う姿勢が感じられました。その態度こそが、SFCで学ぶ上で何より大切なのです。志望する学部の学問分野に強い関心を持ち、柔軟な思考力を養っておきましょう。

皆さんの健闘を祈っています。

なお、慶應義塾大学 総合政策学部(2021年)の回答例別解1もご覧いただき、学習の参考にしてください。

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ABOUT ME
Kaz
2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人&慶應SFCインテンシブコースの責任者です。志望大学合格に向けて、受験生を全力でサポート致します!

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