小論文のノウハウ

近代の知 – 情報環境への適応【小論文読解講座#13】

小論文読解講座13

こんにちは。慶應義塾大学総合政策学部2019年度入学のHiroです。

今回は情報環境への適応について話していきたいと思います。

慶應SFCインテンシブコース

はじめに

今回は、前回の「知識と情報」の続きです。

前回は、知識と情報の関係性と本質についてお伝えしました。今回は、明らかに“情報過多”である、今日の情報社会にどのように適応していくべきなのかを「知識と情報」の関係性の視点から考えていきたいと思います。

情報社会については、大学受験小論文の頻出分野であるため、しっかりと押さえておく必要があります。この情報環境への適応を学習し終えたら、また過去問に取り組んでいただきたいと思っています。

前回も少しお話しした通り、「知識と情報」の考え方が必要となる慶応経済と慶応環境情報の過去問をやる予定です。やはり知識は使わないと使いこなせるようにはならないので、使う練習を増やしていきたいと思います。

過去の小論文読解講座でお話しした内容を使いこなせるようになれば、小論文の対策としては7割くらい完成と言えます。あともう少しだけ知識をインプットして、あとは過去問演習です。過去問演習の中で「知識をどのように使うべきか」を学んでいってほしいです。

情報社会を生き抜くためには

結論から先にお話しすると、情報社会に適応するためには「知識」が必要になります。

情報社会においては、膨大な量の情報が存在しています。人間が情報社会の中で主体的に生きるためには、その膨大な情報を主体的に処理し、自らの行動に“利用”するというあり方を取らなくてはなりません。そのためには「知識」が必要なのです。

自らの実存に基づく知識=経験知を持って、情報の取捨選択を行う必要があるのです。どの情報を受け入れるべきか、複数の情報間に関係性はないか、過去のものと共通点があるのではないか、などといったことを自らの知識を基に主体的に考えていかなければならないのです。「知識のない者に自由はない」ということがよく言われますが、それはこのようなことも含まれているのではないでしょうか。

知識を持たないとどうなるか

知識を持たないと、情報社会=情報環境に適応できず、従属主体になります。知識を持たないと、膨大な量の情報を主体的に処理することができなくなり、情報に支配されてしまいます。情報量が多すぎて、人間の生活空間を情報が埋め尽くしてしまい、処理能力の限界を超え、情報に支配されてしまうということです。

すなわち、情報に対して主体性を保てなくなる=従属主体化します。情報に対して主体的に考察を加えることができなくなるので、情報をそのまま鵜呑みにして行動することしかできなくなります。情報をそのまま内面化・絶対化して、自身の行動規範として情報を盲信することしかできなくなるのです。

ここで「情報に支配される」というのがピンと来ないと思います。官僚制の組織に従属主体化する場合などは、その組織に支配される、組織のトップに支配されるというように、誰に支配されるかが明確でした。では情報社会において従属主体化して、情報に支配されるというのはどういうことなのでしょうか?

情報の背後にある権力

情報に支配されるというのはどういうことなのかを考えていきたいと思います。情報に支配されるというのは、情報の発信元の権力に支配されるということも含まれます。

すなわち、現在の情報社会における情報は、たいていの場合グローバルな権力により発信されているものです。例えば、Google・Facebook・Instagram・Twitterといったものが挙げられます。これらのグローバルな権力にとって都合の悪い情報は、我々がアクセスできないようになっているかもしれません。

我々は、インターネットの発達により、なんでも自由に情報にアクセスできるように錯覚していますが、実際はその自由には制限がかけられている可能性を考慮する必要があります。柵の中の羊は、羊たちは自由に動き回れると思っているかもしれませんが、実際は人間によって行動範囲を制限されています。

このように我々が自由だと思っているものが、実際には不自由であるかもしれません。これはアーキテクチャの権力と呼ばれます。

アーキテクチャの権力

もともとは建築物における権力を指す言葉でした。たいていの建築物には「入り口」というものがあると思います。その建物に出入りする人は、その入り口を使って自由に出入りできていると錯覚します。

しかしながら実際は、建築物を建てた側の権力により、人々の行動は支配されているのです。人々がその「入り口」からしか出入りできないようにしているのです。他のところから建物内に入ることができないようになっています。

別の例でいうとホテルの玄関の点字ブロックの話があります。ホテル側としては、身体障害者に宿泊客として利用されることで手間が生じることを避けるため、身体障害者が利用できなくするために、玄関前の点字ブロックを撤去するというものです。建築物を作る側の権力により、利用者の行動に制限をかけるものです。

情報社会におけるアーキテクチャの権力

先ほどにもお伝えした通り、情報社会におけるアーキテクチャの権力とは、情報のアクセスに制限をかけるものです。情報社会の中に自閉すれば、完全に自由に制限がかかり、不自由な生活をすることになるでしょう。そして、そのことが不自由であるとさえも思わなくなるでしょう。

結論:情報社会を生き抜くための姿勢

情報社会を生き抜くためには、主体的に情報処理を行う必要があります。そのためには自らの実存に基づいた経験知=知識が必要であり、知識を持たないのであれば、情報に、そして情報の背後にあるグローバルな権力により支配されてしまいます。

それを避けるためには、我々が情報環境に自閉するのではなく、自然環境や人間社会の中で実存の人間として価値の創造を行ってゆく必要があります。情報環境に自閉すれば、情報以外の価値に触れることができなくなり、やがて主体性を失い、情報に支配されるだけの存在になってしまうでしょう。

人間は情報環境だけに生きる存在ではなく、自然環境や人間社会に生きるものなので、そのような情報環境以外の環境で、他者との相互交渉を行い自己の中に経験を形成することで、確かな経験知を蓄積し、その経験知に基づいて、情報環境で主体性を保ってゆくことが必要なのです。我々が実存として生きるのであれば、情報社会に対して主体的に生きることができます。その一方で、実存を失うのであれば、情報社会の膨大な情報を処理できなくなってしまい、情報に対して従属することしかできなくなるでしょう。

今回は以上になります。

最後に

いかがだったでしょうか。

この情報社会については、大学入試では頻出であり、また情報社会の時代背景が前提として課題文の背後にあることもよくあります。なので、今回の話は確実に押さえておいてほしいです。

この小論文読解講座では、ロゴス・パトス・近代的主体・実存・従属主体・官僚制・ネットワーク・知識・情報、と様々な話をしてきました。これまではインプット中心でしたが、ここから先はこれらの知識をどのように使うべきかという話にシフトしていきます。

冒頭でもお伝えした通り、次回は過去問演習となります。過去問演習の方針としては、最初の方に課題文のテーマがわかりやすい過去問を扱い、後半にいくにつれて徐々に抽象度の高い年度の問題に取り組んでいきたいと思っています。

次回の知識と情報についての過去問は、問題としては難易度が高いですが、かなりテーマをつかみやすい内容となっています。テーマがつかみやすい年度の問題を用いて、何を課題文から読み取り、何を論述すべきなのかを理解してほしいです。その感覚がある程度養われてきた段階で、少しずつテーマの掴みにくい問題にチャレンジしていき、小論文の実力を高めていくという方針です。

そのような学習を進める際に、知識の段階でつまずきがあると、どうしても実力が伸び悩む原因となります。そのため今のうちに復習をしっかりとこなし、土台を作る意識を忘れないでください。知識は使いこなせることができれば、非常に強力な武器となります。小論文という科目を武器にするためにも、基礎を大事に積み重ねていってほしいと思います。

次回は「小論文読解講座過去問演習 第2回」について話していきたいと思います。

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ABOUT ME
Hiro
慶應義塾大学総合政策学部1年。1年間の浪人を経て、英語・小論文受験で合格しました。通っている学部はSFCですが、本キャンの受験経験があるので、本キャンの小論文の解答解説をメインで書いてます!

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