小論文の書き方

近代の知 – 従属主体化〜他人の規範を自身のロゴスにする近代的主体〜【小論文読解講座#7】

小論文読解講座7

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こんにちは!慶應義塾大学総合政策学部1年のHiroです!

前回の小論文読解講座第6回では、近代的主体と実存という人間のあり方について、お話してきました。

今回は「従属主体化」について話していきたいと思います。また新しい言葉が出てきたと思われるかもしれませんが、これは近代的主体の仲間なので、特に新しく理解すべきことは多くないです。

そして大学受験小論文において、人間に対する考え方については、近代的主体・従属主体・実存の3つを理解できていれば大方問題ないです。そのため、今回の従属主体の記事で人間自体に関する話は終わりで、次回以降はそれらの人間のあり方が実際の社会においてどのように存在していたのかという話にシフトしていきます。

ロゴス・パトス・近代的主体・従属主体・実存といったものがきちんと理解できていれば、近代の思想を理解するのは難しい話ではありません。またこれらの知識が分かっていれば解ける問題というのも多数あります。なので、今後は、過去問演習と並行して、この近代性を学んでゆくというやり方にしていきたいと思っています。

何度も言いますが、ロゴス・パトス・近代的主体・従属主体・実存が分かっていれば、後はそこまで難しくないので、今は踏ん張りどきだと思って頑張ってほしいと思います。

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従属主体化とは、他人により作られた規範を自身のロゴスにする行為

冒頭でも少し触れましたが、“従属主体”は近代的主体の仲間であり、近代的主体の最も悪い状態だということを覚えておきましょう。

というのも、前回の小論文読解講座でもお話しした通り、近代的主体の悪い点は、自身のロゴスを色眼鏡にする間接的な理解であり、パトスで他者の他者性に触れようとはしないので、理解が一義的・限定的です。また、近代的主体は、パトスで感じた他者の他者性を自身のロゴスに組み込むという相互交渉のプロセスを含まないため、自己規範(ロゴス)が拡大しないという特徴があるためです。

それでは、いよいよ従属主体の話に入っていきます。

名前からも分かる通り、従属主体は従属的なあり方です。すなわち、従属的な近代的主体なのです。そもそも近代的主体のあり方とは、「自身のロゴスにより支えられており、そのロゴスという先入観を超えた側面(他者の他者性)を無視し排除するあり方」です。

これは“自己完結”という言葉で表現できるものであり、他律を受け入れない自律的なあり方なのです。

しかしながら、従属主体はある点においては、他律を受け入れるのです。すなわち、他人によって作られた規範を、自身のロゴスにしてしまうということなのです。他者の他者性をパトスで受け入れるのではありません。

従属主体化

他人によって作られた規範をそのまま自分自身の規範にしてしまう、結果として、その他人に従属してしまうのが、従属主体なのです。

従属主体化の具体例1:外国人労働者

この言い方は少々問題があるように聞こえるかもしれませんが、誤解を恐れずに言えば、“日本でアルバイトをする外国人労働者”は従属主体だと言えます。

彼らは、会社のマニュアルを覚えさせられ、マニュアルに書いていないことは絶対にやってはいけないことになっています。マニュアルを超えた行動は許されないのです。マニュアルという他人が作り出した規範を、自身のロゴスにしてしまい、そのマニュアルに沿った行動をします。これは、マニュアルを作り出した会社に従属している状態であり、「自分自身の主体性は喪失してしまっている」状態であり、まさしく従属主体化した状態です。

他人に作られた規範を、自分自身の内面に取り込む、すなわち他人の規範を自身のロゴスにするという行為を「内面化」と言います。「他人によって作られた規範を、自己の中に内面化することで、自身の主体性を喪失し、従属主体化する。」という流れを頭に入れておいてください。

従属主体化の具体例2:〇〇真理教

この従属主体状態は、“洗脳”と言うこともできる場合があります。すなわち、自分自身の意思決定を他人に支配されている状態ということです。他者の規範を内面化したあとは、近代的主体と本質は同じなので、その規範を超えた側面は無視するという生き方です。

有名な話だと、“〇〇真理教”の信者も従属主体だったということであり、信者は教祖の教え以外の側面はことごとく無視したのでした。この状態が良くないことは、言うまでもないでしょう。

実際の入試ではどのように出題されるのか?

実際の大学受験の小論文の課題文では、近代的主体のあり方が良くないというよりも、従属主体化が良くないという形で言及されることが多いです。

ちなみに僕自身は慶應義塾大学総合政策学部の2019年度入学ですが、実際に小論文の入試本番に、現代人のスマホによる従属主体化について論述しました。書いた内容を一言一句覚えているわけではないのですが、大体次のような感じです。

現代人の行動の根源はスマホからの情報である。何をするにしてもスマホの情報を頼りにする。スマホの情報を超えた側面(他者の他者性)に触れることはめったにない。我々が情報環境に自閉し価値の創造を行わなければ、実存を失い、絶えず流れてくる情報に、そしてその情報の背後にあるGoogle等のグローバルな権力に、支配されるだけの存在になる可能性がある(従属主体化)。

カッコ()を使っているのは皆さんに説明するためではなく、実際の入試でこのように記述したのです。近代的主体・実存・ロゴス・パトスといった言葉は、実際に学問的にはよく使われる言葉なので、小論文の解答用紙に書くことに何も問題はありません。むしろ、大学教授にバカウケする解答が完成することでしょう。

従属主体の話に戻すと、従属主体は近代の組織の話で登場することが多いです。

「トップダウンの官僚制の組織」というのを聞いたことがあると思います(今は知らなくても大丈夫です)。この官僚制の組織というのは、トップの人間以外は全員従属主体なのだと言えます。これについてはまた“官僚制の組織”の講座で説明する予定なので、今は特に覚える必要はありませんが、この従属主体という考え方が非常に応用の効く考え方であることを覚えておいてくださいね。

従属主体化のポイント

今回の内容をまとめると、以下の通りです。

従属主体化のポイント

従属主体化とは、他人の作り上げた規範を自己の中に内面化することで、自身の主体性を喪失し、その規範や、規範の背後にある権力によって支配されるだけの存在になってしまう、ということである。

この考え方は、近代の官僚制組織、国家といったところで必要となり、この従属主体がわかっていないとそれらの内容も理解できなくなるので、確実に押さえておいてくださいね。

まとめ

以上になります。今回の内容もしっかりと復習しておきましょう。

近代的主体・実存・従属主体化については、いきなり「説明して!」と言われてもキチンと説明できるレベルまで、自分の中に落とし込んで欲しいと思います。うろ覚えの表面的な知識だと、実際に使いこなすことができないためです。ロゴス・パトスの話もだんだんと頭から抜け始めていると思います。なので、今一度復習ができているか確認していただきたいです。

先に頭に知識を詰め込んでしまえば、あとは使う訓練をするだけであり、過去問を解いて、解答解説を読んで、復習して、また書き直してみて、ということを15問くらいやれば確実に使いこなせるようになると思います。とにかく、ここまでの内容をしっかりと押さえてください。

次回は「近代的主体・実存・従属主体のまとめ」について話したいと思います。

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ABOUT ME
Hiro
慶應義塾大学総合政策学部1年。1年間の浪人を経て、英語・小論文受験で合格しました。通っている学部はSFCですが、本キャンの受験経験があるので、本キャンの小論文の解答解説をメインで書いてます!

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