過去問答案例・解説

慶應義塾大学 総合政策学部2018年 答案例・詳細解説

慶應義塾大学 総合政策学部2018

小論文マスタープログラム

慶應義塾大学 総合政策学部2018年【問い】

慶應義塾大学総合政策学部で研究されている様々な問題は、多くの場合、「選択」に関わっています。選択と言っても、個人の選択ばかりではなく、集団、組織、地域社会、国家、国際社会の選択も射程に含まれます。以下の問題では、ある国政政党の党首の選択の例が挙げられています。どのような選択がなされ、その結果はどう評価されるべきなのか、各資料を読んだ上で、じっくりと考えてみて下さい。

問題
ある政党に所属する国会議員は51名おり、彼(彼女)らの中から党首を選ぼうとしている。今、A氏、B氏、C氏、D氏、E氏の5人が立候補したとする。ここで、51名の議員(立候補者自身を含む)は各候補者に対して、下記の表にあるような党首としての望ましさの順位を付けているものとする。

例えば、1番左の「2人」と書いてある列には、上から順番に1位A、2位C、3位B、4位D、5位Eと書いてある。これは2人の国会議員が、各候補者に対してこの順番で党首としての望ましさの順位を付けていることを意味する。また、右隣の「4人」と書いてある列には、上から顯番に1位A、2位D、3位B、4位C、5位Eと書いてある。これは4人の国会議員が、各候補者に対してこの顧番で党首としての望ましさの類位を付けていることを意味する。他の列についても同様である。

次に、党首選のルールについて考える。ただし、以下では取りあえず、与えられたルールの下で、各議員は前ページの表に従って正直に行動するものとする。

(1)単純多数決
全員が1位の候補者に投票し、得られた票数が1番多い候補者が選ばれるルールを単純多数決と呼ぶ。単純多数決の下では17票を獲得したEが選ばれる。

(2)決戦投票付き多数決
上記の単純多数決で選ばれるEの獲得票数は17票だが、議員は51人いるので26票以上で過半数であることから、Eの票数は過半数に満たない。この時、票数の1位と2位で決戦投票を行い、票数の多かった(過半数を得た)方の候補者が選ばれるルールを決選投票付き多数決と呼ぶ。この場合、EとDの決選投票となり、34票獲得するDが選ばれる。

(3)逐次消去法
全員が1位の候補者に投票し、得られた票数の1番少ない候補者を除いた上で、再度全員が投票を行う。但しこの時、投票した候補者が除かれた議員は、除かれていない者の中で最上位の候補者に投票することになる。こうして最低票数の候補者を1人ずつ除きながら投票を繰り返していき、最後に残った候補者が選ばれるルールを、逐次消去法と呼ぶ。

(4)ペアごとの多数決
候補者のべア(全部で10通り)ごとに投票を行い、いかなる相手に対しても票数で上回る候補者(べア全勝者と呼ばれる)が選ばれるルールを、ペアごとの多数決と呼ぶ。例えば、AとBのべアに対する投票の場合は、Aが26票、Bが25票となるので、AがBに票数で上回る(AがBに勝利する)ことになる。

(5)順位評点法
議員ごとに1位の候補者に4点、2位の候補者に3点、3位の候補者に2点、4位の候補者に1点、5位の候補者に0点を付けて、候補者ごとに点数を合計し、最多得点を獲得した候補者が選ばれるルールを、順位評点法と呼ぶ。

慶應義塾大学 総合政策学部2018年【答案例】

問1

(単純多数決)
1位 E、2位 D、3位 C、4位 B、5位 A

(決選投票付き多数決)
1位 D、2位 A、3位 B、4位 C、5位 E

(逐次消去法)
1位 C、2位 E、3位 D、4位 B、5位 A

(ペアごとの多数決)
1位 A、2位 B、3位 C、4位 D、5位 E

(順位表点法)
1位 B、2位 A、3位 C、4位 D、5位 E

問2

慶應義塾大学総合政策学部2018年

問3

順位評点法 > 逐次消去法 > 決選投票付き多数決・ペアごとの多数決・単純多数決

党首選のルールを検討するにあたり留意されるべき点として、1名のみ選ばれるという他に、「①党首選後の政党運営がスムーズに行われるべき」、「②手続きは多少複雑でも、より党員の総意が反映される形式を採るべき」という2点が挙げられる。党首を選んでも政治がスムーズに進まなければ政策が実現できず、また国政選挙と異なり少人数での投票のため手続きの複雑さは問題視されないためだ。

その意味で、①全体の順位を重視しつつ、②ペア毎の順位の高さも考慮に入れて、党首選のルールを設計することが望ましい。これらを踏まえて、上記で作成した表を9分割し、縦横それぞれの軸に1点、3点、5点と配点し、合計した点数が高い順に、ルールに順位をつけてみたい。

それらを高いレベルで満たすルールは、順位評点法である。次に、ペア毎の順位がより重視されている逐次消去法が次善策だ。ペアごとの多数決は全体の順位が重視されておらず、また単純多数決はペアごとの順位が重視されていない。決選投票付き多数決は、その中間の位置付けだが、全体の順位とペアごとの順位の2つの視点において投票する側から不満が残ってしまう。

したがって、党首選では順位評点法を採用することで、全体の順位を重視しつつ、ペア毎の順位の高さも考慮された党首が選出されるため最善のルールだと考える。(553文字)

問4

2014年の衆議院議員選挙(小選挙区)では、民主党代表の海江田氏が自民党候補者に負け、落選してしまった。野党第一党の党首が落選するということは、極めて異例である。

原因の1つに、1つの選挙区から最も多く票を得た1人を選出する制度である小選挙区制度において、共産党に票が割れてしまったことが影響していると思われる。今回の選挙で、自民党との対決姿勢を鮮明に打ち出した共産党は、与党への批判票の受け皿となって躍進した。もし民主党と共産党が、自民党の議席を減らすという共通目的を掲げていたならば、野党内で投票が分散されないように、候補者擁立の際に協力し合うこともできたのではないだろうか。(286文字)

慶應義塾大学 総合政策学部2018年【解説】

2018年の総合政策学部の小論文のテーマは、「望ましい社会的選択のルールとは何か?」というものです。普段、当たり前に使われている選び方である多数決(単純多数決)が、「本当に人々の意思を適切に集約できているのだろうか」という問題提起に始まり、より望ましい選び方のルールを見出さそうというテーマです。

今年度のテーマは、受験生にとってかなり難解だったのではないかと思います。2時間という時間制限に対して、骨太な資料の読み込みと、900文字(600+300)の記述を含む4つの問いへの対応は、受験生はもちろん、大学生や大学院生にとっても難解であることは間違いありません。

こういった難解な課題に直面したとき、焦って資料を読み始めても泥沼にハマってしまうだけです。小論文のトリセツで繰り返し説いているように、まずは問いを読解することに集中しましょう

実際のところ、問1の内容が理解できなければ、資料を読んでも十分な理解が得られないのではないでしょうか。制限時間内に、これらの膨大な資料を一言一句理解して読み込もうとすることは現実的ではありません。

そうではなく、問いを熟読して、何に答えれば良いのかを押さえた上で、資料から必要な情報をピックアップしていくという姿勢が、SFC小論文で合格点を取るためには求められます。個人的には、問いの熟読および問1の回答に30分間かけても良いと思います。

それでは、各設問の解説を進めていきましょう。

問1

問1は、基本的には問いの説明文にしたがって、得票数を計算していけば回答できると思いますが、制限時間があり、緊張した試験本番の環境では焦ってしまい、満足な回答が出せなかったという受験生も多くいたのではないかと思います。

しかしながら、この問題の意図が分からないと、続く問2、問3も正しい回答を導き出すことは不可能です。それぞれの設問は、一貫性・連続性を持っているからです。したがって、落ち着いて正確な理解を得ることに努めましょう。

特に、(4)ペアごとの多数決は、計算方法が分からない方もいたのではないでしょうか。ペアとは、A-B、A-C、A-D、A-E、B-C、B-D、B-E、C-D、C-E、D-Eの10通りのペア(1:1の対)を指します。

A-Bペアでの投票の計算方法としては、問いに記載のように、列(縦)で見て、AとBのうち、勝っている方の特典を合計していきます。例えば、左端(2人)の列では、AはBに勝っているので2票獲得、左から2番目の列ではAは4票獲得、左から3番目の列ではBが8票…と繰り返していくと、

A=2+4+9+11=26票
B=8+17=25票

となります。これを上記の10パターン繰り返し、勝った回数が多い候補者順に並べるというものです。

なお、計算していくと、以下のようになります。

素早い理解力と、正確な計算力が求められますね。

問2

SFC小論文では、問いや資料で示される多様な考えや複雑な事象を、自分なりの視点で整理することを求められることがしばしばあります。今回もその1つですね。

こういった「整理問題」における整理の仕方はいくつかありますが、小論文のトリセツが推奨する整理方法は、マトリクス図法です。

マトリクスとは、要素が縦横に格子状に規則正しく並んでいる構造のことです。このマトリクスを使って、行と列による2軸の交差表を作り、問題解決のための着眼点を導き出すための図を作成するのです。

ポイントは、縦横それぞれの軸で、相関性のない独立した指標(情報)を定めるということです。本問で言えば、「全体の順位重視」と「ペア毎の順位重視」は別々の指標なので採用しました。ダメな例として、「全体の順位重視」と「支持者数」という指標は相関している(ほぼ同じ結果)と言えるので、軸の設定としては適していません。

あとは、自分なりの考えで、マトリクス内にプロットしていきましょう。問3では、その思考の過程が問われます。

なお、別解も記載しますので、参考にしてみてください。

慶應義塾大学総合政策学部2018年

問3

上記のように、問2の回答をベースに、なぜそのような図になったのか、そしてどのように採用するルールの優先順位を決めたのかが問われています。

ただし、本問ではまずは「党首選で求められる選び方は、どうあるべきか?そのために留意すべき点は何か?」という前提条件について触れておくことが大事です。「自分の主張はどういう条件のもとで説得力を有するのか?」、という前提条件を相手に伝えることは、小論文でも大学での論文でも然り、論理的な文章を書く上では必要なことです。

それを踏まえて、前半(200〜300文字)で党首選で求められる選び方、後半(300〜400文字)で図の解説と順位づけの根拠を説明しましょう。

問4

「社会的選択の分析枠組みに基づいた分析」の「社会的選択の分析枠組み」とは、問いで挙げられているような「決め方のルール」、すなわち「集団での合意形成の方法」を指しています。

論点としては、自分(個人)だけではなく、自分たち(社会、集団)の決定を行うためには、異なる多数の意思を一つに集約しなければならず、その集約の方法(ルール)次第では結果が変わってしまう、という点があります。

問いを参考にすると、集団とは、「組織」「地域社会」「国家」「国際社会」といった範囲まで広がっています。問いはヒントを与えてくれているということを、忘れないようにしてくださいね。

これらを踏まえて、集団での決め方の事例としては、下記のようなものが挙げられます。

・日本の党首選挙は、決選投票付き多数決が行われている。もし順位評点法が採用されていれば、結果が変わっていたかもしれない

・東京都知事選挙など自治体の首長を選出する選挙では、1名しか投票できない。1位の候補者だけでなく、順位評定法にしたがって2位、3位と順番をつけていけば、より民意に近い候補者および政策が選ばれるのではないか

まとめ

2時間という制限時間に対して、問い・資料ともに、かなり難解だったと言えます。SFC小論文では、図表やグラフの読み取り力を前提とした問題がしばしば出題されますので、短時間で正確な理解が得られるように、過去問を通じて対策をしておきましょう。

また、問いを一読して理解できないからといって、焦って闇雲に資料の読解に走らないようにしてください。ドツボにハマるだけです。落ち着いて、問いの読解に集中するようにしましょう。

なお、小論文マスタープログラムでは、小論文の解説授業やマンツーマンでのオンライン指導も行っていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

ABOUT ME
Kaz
Kaz
高校卒業後1年間浪人し、2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人です。一見難しい小論文学習の面白さを伝え、大学受験合格に導くため、日々情報発信を行っています。

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