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慶應義塾大学 環境情報学部2014年【問い】
湘南藤沢キャンパス(SFC)開設25周年を記念して、シリーズ『地球と人間』が出版されることになり、その準備がはじまりました。あなたは、高校生編集者として、このシリーズのうちの一冊の本を編集することになりました。
あなたが編集を任されたのは、異なる作者による文章を集めた本で、あらかじめ以下の【A】〜【I】の9つの文章が、収録される候補として選ばれています。ただし、ページの分量制限があるため、本に収録できるのは9つのうち6つの文章です。本は、あなたが書く「はじめに」という文章と、6つの文章で構成されます。
あなたは、どの文章を選んで、どのような本を作りたいと思いますか?あなたなりの問題意識にもとづいて、本の構成を提案しましょう。
問題1
まず、【A】〜【I】の文章に、それぞれ小見出しを(短いタイトル)をつけてください。
問題2
あなたなりの考えにもとづいて、本に収録する文章を6つ選んでください。なお、どの文章を選ぶかについては、採点の対象とはなりません。あなたの発想で、自由に選んでください。
(1)選ばなかった3つの文章のアルファベットを記入してください。
(2)3つの文章を選ばなかった理由を、300文字以内でまとめてください。
問題3
あなたは、「はじめに」という文章を書いて、選ばれた6つの文章を通じて読者に感じ取って欲しいことを伝える必要があります。
編集者のあなたの考えを紹介しながら、この本の読者に伝えたいことを、1000字以内でまとめてください。
問題4
あなたが編集する本に、タイトルをつけてください。次々と刊行される予定の、シリーズ『地球と人間』にふくまれる一冊として、魅力的なタイトルを考えてください。字数は、記号を含めて25文字までとします。
慶應義塾大学 環境情報学部2014年【答案例】
問題1
[A]人と人の交わりで再現される川
[B](省略・赤本にて資料省略のため)
[C]科学と理屈に流されるヒトの単純さ
[D]自然的役割と相互作用による多様性
[E]科学技術の発展に反するSF文化の広がりと現実
[F]震災支援の正しいあり方
[G]壊変されていく日本の河川
[H]オゾンホール発見の経緯
[I]成長と中庸の選択と勝敗
問題2
(1)D,E,F
(2)編集するシリーズの主題は「地球と人間」であり、私は9つの文章より、特に両者の関わりについて述べているものを収録したいと考えた。Dの文章は、確かに地球やそこで生きる生物間の関係が記されているがあくまで「生物間」の領域を出ず、人間に関連していない。Fの文章は人間が自然災害である地震に見舞われ、またその中で復興に向けて生きる被災者に何ができるか、何が求められているのかを考えるという人間主体のものである。Eについては、科学技術の発展とSFに関する文章ではあるが、これには自然、地球についてではなく人間の文化的な営みに主眼を置いている。以上の理由により、私はこれら3つの文章を採用しなかった。
問題3
本シリーズ「地球と人間」で私が読者の皆様に感じていただきたいことは、タイトルにもあるように「自然とボクら」です。私たちは日常主に人間と関わって生きていく生き物ですから、少し大きな視点を持って地球と人間との関係について考えた事はあまりないのではないでしょうか。本書が皆様の、自分と自分を取り巻く環境について考えをめぐらせることの一助となれば幸いです。
まず、このような壮大なテーマどこから考えれば良いか分からないと感じる読者の方もいらっしゃると思います。そのような時は比較的身近な話題から見ていきましょう。Aでは、人間の手によって失われたきれいな河川の昔の姿を取り戻すために地域の住民へ働きかけるということが書かれています。続いてGではダムや発電所などの建設による影響で自然の姿の海岸の浸食が起きていると書かれています。私たちが今住んでいる、いや住み着いているこの地球を、私たちの勝手な事情で破壊しているという事実が読み取れます。そしてついにはHのように地球の外にまで、私たちは破壊の手を伸ばし始めているのです。この現実を知り、あなたはどんな感想を持つでしょうか。「地球と人間」というテーマのこのシリーズですが実態には「人間が地球を」破壊し続けているという側面もあるのです。
その結果、例えばHによると人間が発生させたフロンガスによってオゾン層が破壊され、地球へと降り注ぐ紫外線が増加してしまい、人間への健康被害が発生すると指摘されています。結局、人間は自然に危害を加えたということに対しての罰を受けなければいけないのです。
また特にHにおいて科学的技術によりオゾンホールの存在が明らかになりました。地球と私たちの関連を理解するために、また私たちが地球に及ぼした影響を知るためにも、科学的技術は必要不可欠です。ですがその「科学的」に私達は騙されてしまうこともあり得るのです。(Cより)
なので、私たち地球と人間との関わりを考えるにあたって常に加害者としての意識を持つことが重要だと思います。最大などは天災ですがオゾンホールの問題また海岸の浸食などの事の発端は人間の自分勝手です。「自然に何ができるか」ではなく「何をどうすれば自然への暴力は今より減らせるか」と考えることが重要です。
そしてそれらの問題への考えの助けとなる科学的データも鵜呑みにすることなく有効に活用する必要があるのです。
問題4
タイトル:自然とボクら
慶應義塾大学 環境情報学部2014年【解説】
この問題は僕がSFC小論文の対策として1番最初に着手した年度の問題です。
このように大量の資料を短時間で処理すべき問題は初見ではなかなか捌ききれないかもしれませんが、ポイントを押さえた上で類似している他年度の問題に挑戦したり、この問題のリライトをしていくことで、だんだんと納得の行く答案が書けるようになってくるので、焦らずにがんばりましょう。
まずこのように大量の資料を読ませる問題が出たら、「強弱をつけて資料を読む」ということを意識しましょう。問題を確認すればわかりますが、資料文は全て真剣に読むべき量を超えています。そのため、「これは重要だな」「この情報は捨てても自分の答案に悪影響は出ないな」と言ったように資料を選別していけば、時間も集中力も節約できます。
この重要か重要でないかの選別法ですが、今回の問題では「本に収録する文章を選ぶ」という指定があるので、そのことを念頭に置いて問題文の指示通り「その本で何が伝えたいのか?」ということを軸にして分けます。例えば私は文章を読んでいくうちに「地球と人間っていうタイトルをもらっているのだから、それに乗っかって自然と人間の関わりについて書かれているものを集めればかなりスムーズに答案が書けそう。じゃあその軸にあてはまらないDとEとFは除外しよう。」という流れで選別しました。
このように問題に答える目的を教えてくれるという点でこの年度の問題は親切と言えます。今回はSFC側がその目的を提示してくれているのでそれに乗っかるだけですが、他の年度の問題にはその目的が隠されているものが多々あります。
「この問題は何を聞くために置いているのだろう」と考えることを習慣づけるようにするとさらにSFC小論文書きやすくなるだけでなく、他の教科にも良い影響が出ると思います。
問題1
この問題は明らかに導入であり、重要度は低いのでスピーディーに処理しましょう。試験時間は120分なので、資料文を読み込みながらその合間合間にそれぞれの要約を簡単に30~40分程度で行えば資料文読む+問題1捌く+問題2,3の内容を大まかに考える、などこの問題を一気に支配できる行動が素早く行えます。
冒頭にも書いたとおりこの年度は私が初めて触れたSFC小論文であり、答案例もその時のものなのですが、正直に言うとめちゃくちゃ苦労しました。実際この答案例は試験時間120分の中では書き終わらずに、20分ほど足してようやく書き上げたものをさらに少し修正したものです。そのくせ私は解説で偉そうなことを書いています。
ですが、逆に考えると小論、日本語の力は伸びるものだなと感じました。初めて触れた時はろくに書けなかったのに、過去問演習を重ねていくうちに徐々に感覚を掴み、SFCに入学した今、小論文の解説記事を書いています。こう考えると、小論文を真面目に勉強することは「日本語力」という観点から見てもかなり有益なことだと感じます。
もともと文章を読んだり書いたりするのが好きだった私ですが、受験を通して小論文に取り組みアウトプットの量を増やすことで文章力がかなり上がりました。大学にはレポート課題があるのですが、友達が苦戦しているレポートも集中して取り組めば瞬殺です。
小論文は正しい方法で頭を使って学べば、絶対にあなたの人生にプラスに作用します。もし小論文の勉強が辛くなったら、少し休んだ後にこの言葉を思い出してみて下さい。
話が逸れてしまいました。問題2に進みます。
問題2
問題文を見て要求を確認します。
「あなたなりの考えにもとづいて」
「本に収録する文章を6つ選ぶ」
「どの文章を選ぶかについては採点の対象外」
「あなたの発想で、自由に」
とにかく受験者の自由度が高い問題です。自由度が高いとそれだけ楽になるかと思いきや、逆に少し書きづらくなってしまいます。ですがここは落ち着いて問題3から逆算して「読者に何を伝えたいのか?」を軸にして考えます。一見自由度が高すぎて書けないように思える問題も、それと地続きになっている問題から考えるとすこしやりやすくなります。
繰り返しになりますが、私は「自然と人間の関わり」を書くと決めたのでそれに関する簡単な構成を資料の選定含めて問題3を見て先に作っておき、それを逆から問題2に流し込みました。選ばなかった理由については回答例を参照して下さい。
問題3
ただでさえヘビーと言われているSFC小論文の中でもかなり重めに見える問題です。1000字以内。原則として、「◯◯字以内」の指定がなされた場合は最低でもその字数の八割五分は書くことが望ましいです。今回なら850文字は書きたいところです。
ただ、今回は問題の指定に「編集者としてあなたの考えを紹介しながら」「この本の読者に伝えたいこと」を「選ばれた6つの文章を通じて」書きます。つまりこの1000字はそれぞれおおまかに6つのブロックに分けることが可能というわけです。(導入まとめを加えたら8つ)つまり一つのブロックは125~160文字程度。それを6つ、もしくは8つ書く。少し簡単に聞こえますよね。
「困難は分割せよ」という言葉がありますが、この問題では「困難が分割されている」状態で出されるため、見かけよりも楽に書くことが出来ます。このように楽をするための読解力などは過去問演習を通して身に着けていきます。
問題用紙の余白にそれぞれ選んだトピックを書き出し、それがどんな役割を果たすのかを書いていくとさらに書きやすくなります。他の問題でもそうですが、長めの問題に取り掛かる時は必ず大まかな構成など下書きをしましょう。これは走り幅跳びでいう助走区間のようなものです。短すぎては遠くに跳べない。かといって助走が長すぎてもかえって跳びづらくなる。適切な助走区間(下書きにかける時間の長さ/下書きの詳しさ)を取るのがポイントです。
問題4
これに関しては問題3の文章を考える際に一気に出します。タイトルといえばSFC小論文でよく出る要約問題と同じです。簡単。今回は少し字数が多いので要約に時間がかかると思うかもしれませんが、自分が問題3を組み立てる時に用いた軸となるテーマに絡めて書けば簡単です。どちらにせよ、この問題に高い配点がなされているということはありえないので大それたことを書かなければ大丈夫かと思われます。