小論文のノウハウ

小論文って何?基礎から学ぶ小論文の書き方【慶応SFC卒業生が徹底解説】

小論文とは

大学受験生にとって、小論文学習は馴染みの薄いものですよね。なぜなら、ほとんどの高校生は、学校の授業で小論文を教えてもらえないからです。

その一方で、小論文を受験科目に課す大学は年々増えており、特に慶應義塾大学などの難関私立大学や、国公立大学の二次試験では小論文対策は避けて通れません。逆に言えば、小論文で高得点を取ることができれば、他の受験生に対して大きな差をつけることができるのです。

そこで、本記事では、

・小論文とは何か、作文とはどう違うのか?

・小論文の書き方

・小論文の評価基準

といった点について、基礎的な内容(=もっとも大事な内容)を、できるだけ分かりやすくお伝えします。10分程度で読める内容ですので、ぜひじっくりお読みくださいね。

慶應SFCインテンシブコース

小論文とは何か?

チワワくん
チワワくん
そもそも、小論文って何なの?作文とどう違うの?
Kaz
Kaz
馴染みのない科目だよね。じゃあ、まず小論文とは何かについて考えてみよう!

まずは、小論文とはどのような文章なのかについて、正しく理解しましょう。

名古屋大学大学院教授の戸田山 和久(とだやま かずひさ)先生は、著書『論文の教室 – レポートから卒論まで』(NHK出版),2012で、論文の定義として以下のように記載しています。

※戸田山先生のこの本は、大学生はもちろん、小論文受験生にとっても大変有益な名著です。ただし、大学のレポート・論文と受験小論文は異なるので、小論文受験生向けにアレンジして解説しますね!

論文にはつぎの三つの柱がある(論文の定義)

 ①与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、

 ②一つの明確な答えを主張し、

 ③その主張を論理的に裏付けるための事実的、理論的な根拠を示して主張を論証する

論文とは、「問い」に対して「自分の考えを主張し」、「説得力を高めるために根拠・論拠を提示する」という文章なのですね。

上記①〜③は、論文の定義ですが、大学受験小論文では、①の「問い」は大学側から与えられている場合が大半です。したがって、小論文の定義として、以下のように定めたいと思います。

小論文とは、与えられた問いに対して、あなたの明確な答えを主張し、その主張を論理的に裏付けるための根拠を示して論証する文章

まずは、小論文には、「問い」「主張」「根拠」という3つのセットが必要だということを覚えておきましょう。

小論文と作文の違い

多くの小論文受験の初心者は、「小論文って、作文とどう違うの?」と疑問をもつことでしょう。もしくは、数百枚以上の小論文添削を行った経験から言えることですが、こういった疑問を明示的にもたなくても、作成した小論文答案がいかにも作文っぽくなってしまっている場合が、驚くほど多いのです。

小論文試験では、作成する答案を作文っぽくしないということは非常に大事です。もし小論文試験で作文を書いてしまったら、残念ながらそれは非常に点数の低い答案になってしまい、ほとんど不合格が確定してしまいます。そのため、作文と小論文の違いを、ここでしっかり押さえておきましょう。

作文と小論文の違いについて、小論文のトリセツでお勧めしている参考書『小論文を学ぶ – 知の構築のために(山川出版社),2001』では、以下のように整理しています。

まず、作文とはどのような文章かをまとめます。

●作文とは

・作文的な文章とは、私の視点や、あるいは一般的に個人の視点からものをいう文章のことである

・事柄(事実)の受容に際しての心理や感情を書き記そうとするのが作文の本質

・一度自分の心理のなかに事柄を取り込んで、その上で、すでに心理化(主観化)された事柄を「思い」として語り直そうとする文章である

私(自分自身)の視点や個人の視点から、心理や感情(思い)を書き記す主観的な文章が、作文ということですね。ものすごく簡略化して例示すると、「今日は晴れていて、良い気分だ。」や、「日本の少子高齢化は、悪いことである。人口が減ることは好ましくないと思うからだ。」といったような文章は作文です。

一方で、小論文とはどのような文章なのでしょうか?

●小論文とは

・小論文の文章とは、あくまで社会的な事柄を、主観化や内面化に走らずにあくまで客観的・社会的に語ろうとするのである

・小論文を書くに際して、最も大切なことは、それが作文的にならないことだ。作文のような主観化や内面化に走らないこと

・小論文の問題というのは、究極的には現代という歴史的現在における知のあり方を問う問題である

小論文とは、社会的な事柄に対して、客観的・社会的な視点から論じる文章ということですね。なお、本書では、知のあり方とは、「世界観」や「人生観」や「社会観」というほどの意味だと述べています。

作文と小論文との違いを図解すると、以下のようになります。

小論文と作文の違い出所:長尾達也著『小論文を学ぶ』を元に筆者作成

小論文の答案を作成する際に、上記の視点の違いに気をつけるべきということが理解いただけると、小論文受験のスタートラインに立てたといって良いでしょう。

小論文は、自分の考えを普遍化された形で書いた文章である

先ほどの図解をもう一度見てください。この図を通じて、小論文の視点は、社会的事象を観ていて、その視点を得るためには「普遍化」する必要があるというメッセージをお伝えしています。この「普遍化」とはどういうことか、大事なので少し解説していきます。

まず、小論文とは、自分の考えを普遍化された形で書いたものである、と覚えておきましょう。大辞林 第三版によれば、普遍化とは、

個別的・特殊なものを捨て、共通なものをとり出すことによって概念や法則などを引き出すこと

という解説を確認することができます。少しイメージがわきにくいかもしれませんが、シンプルに言えば、普遍化とは共通化させる、という意味です。

では、小論文の答案作成において、何を共通化させるのでしょうか?それは、自分の考え・主張を共通化・普遍化させるということなのです。すなわち、いくつかの根拠・論拠をふまえて、筋道立てて考えていったら、他の人も自分と同じ考えに至るはずだというのが「普遍化された私の考え」であり、その普遍化された自分の考えを、問いに対して、文章で提示するのが小論文なのです

自分の考えを普遍化するためには、採点官を含めたどんな読み手でも、書き手の考え・主張を、筋道をたどってチェックできなくてはなりません。そのためには、あなたの考え・主張をサポートする根拠・論拠が必要です。この「主張」と「根拠・論拠」の論理的な繋がりが強固であればあるほど、普遍化された考え、文章だと言えるのです。

この点については、小論文短期集中講座で詳しく解説していますので、併せてお読みくださいね。

大学側は小論文受験を通じて、受験生に何を期待しているのか?

それでは、出題者側である大学は、小論文試験で受験生にどのような答案を期待しているのでしょうか?実際の大学の入学試験要項を確認してみましょう。

たとえば、慶應義塾大学の2020年度一般入学試験要項の、総合政策学部及び環境情報学部の入学試験概要において、試験に関する諸注意として、以下のように記載されています。

小論文について


問いに対して自らの考えを論述する形式の試験です。この試験は受験生の発想、論理的構成、表現などを総合的に評価しようとするものです。どれだけ発想豊かに、自分の考えを論文として論理的に構成し、説得力のある表現ができるかを問うものです。

慶応SFCの小論文試験では、発想力、論理的構成、表現が評価のポイントということですね。

なお、同様に、慶應義塾大学法学部の入試要項では、次のように記載されています。

論述力について


広い意味での社会科学・人文科学の領域から読解資料が与えられ、問いに対して90分、1,000字以内で論述形式の回答が求められます。この試験は受験生の理解、構成、発想、表現などの能力を評価しようとするもので、そこでは読解資料をどの程度理解し(理解力)、理解に基づく自己の所見をどのように論理的に構成するか(構成力)、論述の中にどのように個性的、独創的発想が盛り込まれているか(発想力)、表現がどの程度正確で、かつ豊かであるか(表現力)が評価の対象となります。

法学部は、小論文(論述力)の評価基準まで丁寧に記してくれているので、SFCよりも親切ですね(笑) 慶応法学部の論述力の評価基準は、理解力、構成力、発想力、表現力の4点がポイントです。法学部受験生は、必ず上記内容を念頭に置いておきましょう。

いずれの大学でも、小論文試験では構成力(論理的構成)が不可欠であることが分かりますね。この論理的構成力は、作文との根本的な相違点であり、あなたの考え・主張を普遍化しそれを文章化したもの、すなわち小論文であるための必須要件なのです。

小論文とはどんな文章なのか、作文とはどのように異なるのか、理解できましたでしょうか?ぜひ繰り返しこの記事を読んで理解を深めてくださいね。

小論文の書き方


それでは、次に小論文の書き方について具体的にお伝えしていきます。いくつかの方法がありますが、今回は難関大学の小論文入試で求められる水準を想定して、小論文の書き方の基礎編としてお伝えします。

小論文の書き方とは、概念(キーワード)を埋め込むプロセスである

前段落で、小論文とは、自分の考えを普遍化された形で書いたものであるとお伝えしました。自分の考えを普遍化して、文章として記述するためには、言葉の概念化(キーワード化)が不可欠です。

概念(キーワード)とは何かについて、『小論文を学ぶ – 知の構築のために』では、以下のように述べられています。

●概念とは何か?

・概念とは、ある事物を表す際に、それを使うことによって初めてその事物がはっきりと意味づけられるような言葉のことである。

・例えば、「人間」や「人」という概念は、二本足でコトバを使って思考する地球上の動物というモノを表す。

・人間が思考する場合、その対象が何であれ、概念的に思考している。だから、逆にいえば、思考するためには概念が必要となる。

概念(キーワード)を通じて、伝えようとするメッセージを明確に意味づけし、自身の考え・主張を普遍化していくプロセスが、小論文答案の作成ということです。

逆に言えば、概念が記載されていない文章は、小論文にはなり得ません。「作文っぽさ」を感じる文章は、往々にして、この概念が存在しないのです。

これらを踏まえると、小論文答案の書き方とは、いくつかの概念(キーワード)を用意し、答案内に適切に概念を埋め込んでいくプロセスだということです。答案用紙に、概念(キーワード)を適所に埋め込んでいくことによって、小論文は形成されます。

シンプルに言えば、どのような概念を用意するかによって、小論文の質が決定されるのです。

小論文答案で用いる概念(キーワード)を、どのように見つければ良いか?

それでは、大学受験の小論文試験において、どのように概念を見つけて用意すれば良いのでしょうか?

以下の3つの方法で、概念を用意することができます。

① 課題文に記載されている概念

② 課題文には記載されていないものの、演繹的・類推的に導かれる概念

③ 問いや課題文で論点となっている事柄についての、背景的な知の中に見出される概念

それぞれ、ポイントを解説していきます。

① 課題文に記載されている概念

①について、こう言ってはなんですが、一般的に偏差値が低めの大学では、

「自由とは何か?あなたの考えを700字以内で述べなさい。以上」

というようなシンプルな出題が多いですが、難関大学の小論文試験はそうではありません。問いに加えて、課題文が付いていることが大半です。そして、この課題文をどう扱うかがポイントなのです。

難関大学が用意する小論文試験の課題文は、ほとんど確実に難易度の高い文章で構成されています。課題文は1つだけのこともあれば、慶応SFCのように複数の場合もあります。

この課題文を敵にまわして、答案でまったく触れずに文章を作成することはNGです。「問い」の中で指示がある場合が大半ですが、出題側としては、さまざまな意図から選りすぐった課題文の内容を理解してもらった上で、その内容を踏まえた答案の作成を受験生に期待しているのです。

課題文を無視した独りよがりの答案は、間違いなく不合格答案となりますので気をつけてください

その意味では、課題文は答案作成のためのヒントの宝庫なのです。ヒントなのですから、それを利用しない手はありません。すなわち、課題文に記載のある概念(キーワード)は、自分の答案で積極的に使って良いのです。

② 課題文には記載されていないものの、演繹的・類推的に導かれる概念

また、②で指摘したように、「課題文には記載されていないものの、演繹的・類推的に導かれる概念」も、積極的に使うようにしましょう。

「〜〜を考えるにあたり、資料1では、◯◯と言っている。一方で、資料2では、××と指摘している。これらから、△△ということが言えるのではないだろうか。」

というような書き方です。

②の概念の使い方の優れたポイントは、自分自身に問いで問われているテーマに関する背景知識がまったくなくても、課題文をしっかり理解できていれば、自分なりの概念を導き出せる点にあります。小論文は詰込み型・暗記型の試験ではありません。課題文に基づいて、問いの要求に対してあなたの考えを述べて論じる試験です。そのため、自分なりの考えを主張することは不可欠です。この②の概念の使い方は、自分なりの考えを導きやすいので、ぜひ積極的にトライしてみてください。

③ 問いや課題文で論点となっている事柄についての、背景的な知の中に見出される概念

最後に③ですが、これはぶっつけ本番でなんとかなる類のものではありません。また、「小論文頻出テーマ本」で推奨されるような、表面的なフレーズの暗記で対処する方法とも異なります。

繰り返しますが、小論文とは、社会的な事柄に対して客観的・社会的な視点から論じる文章であり、社会的な事柄に対して、あなたの「世界観」や「人生観」、「社会観」といった知のあり方を問われているのです。

あなた自身の世界観に照らし合わせて知のあり方を論じる際、常に過去からの延長戦で現在を捉え、そして未来を考察しなければなりません

言い換えれば、過去(近代)との比較・反省を通じて、これからの知はどうあるべきで、それを踏まえて現在に起こる諸問題にどのように取り組んでいくべきなのか?ということが問われているのです。

そのためには、明示的あるいは黙示的に前提条件である、近代の知について理解することは不可欠です。この近代の知については、2019年慶応SFC入学のHiroくんが「小論文読解講座」にて、詳しく解説しています。難解な部分もあるかもしれませんが、いずれも難関大学の小論文対策のためには大事なポイントですので、ぜひ熟読してくださいね。

まとめますと、①課題文に記載されている概念②課題文には記載されていないものの、演繹的・類推的に導かれる概念③問いや課題文で論点となっている事柄についての、背景的な知の中に見出される概念という、3つの方法で概念(キーワード)を用意し、答案内に適切に概念を埋め込んでいくことで、小論文の答案を作ることができます。

小論文答案を作成するにあたり、適切な概念さえ用意できれば、小論文を書くプロセスのうち半分以上は完了したと思って良いでしょう。

小論文の構成


さて、用意した概念(キーワード)をどのように埋め込めば、より合格水準の小論文に近づけるのでしょうか?

多くの参考書では指摘されていませんし、おそらく高校の先生方も教えていないと思われますが、実は論文あるいは小論文には「型」というものが存在します。この小論文の型、あるいは小論文の構成を身につけ、適切に概念を配置させることができれば、飛躍的に小論文の得点力が高まります。

小論文のトリセツが推奨する小論文の構成は、以下の3つの要素が順番通りに並んだものです。

●小論文の構成

① アブストラクト
② 本体
③ 結論

たとえば、答案用紙の字数制限が800文字でしたら、①アブストラクト…200文字、②本体…500文字、③結論…100文字といった具合に段落を分けていきます。なお、長すぎる段落は分割した方が良いので、この場合②本体で2段落を用いた方がベターです。

それでは、上記3つのパートが何なのか、具体的に確認していきましょう。なお、この構成の作り方については、小論文短期集中講座③にて、アウトラインの作成の仕方として図解入りで詳述しています。こちらも必ずチェックするようにしましょう。

それでは、小論文の構成の3つの要素について、解説していきます。

① アブストラクト

アブストラクトとは、論文の内容を要約したものです。大学の論文(卒論や学会で発表するレベルの論文)では常識的に使われています。

アブストラクトは、小論文受験にも適用できます。すなわち、あなたの小論文答案の内容を要約したものを第一段落に記載するのです。答案の要約では、以下の2つのパターンを推奨しています。問いの指定に応じて、使いやすい構成を利用する、もしくは構成をアレンジして使ってください。

1. 主張→理由→根拠・論拠
2. 導入(根拠・論拠)→主張→理由

小論文答案の冒頭をアブストラクトから始めるべき理由は、採点者・添削者にとって、この配置が明らかに読みやすいためです。アブストラクトとは、いわば小論文答案の「地図」です。冒頭で地図を見せてくれると、答案の全体像を理解することができ、採点者にとって楽に読めるのです。

読みやすい答案、楽に読める答案は、論理構成がしかりしているという観点から、評価が高くなります。逆を考えてみましょう。読みづらくて理解しづらい答案の評価は、高くなるでしょうか?評価は低くなれど、高くはなりませんよね。受験生は、ぜひ読み手にとって読みやすい答案作成を心がけましょう。

② 本体

本体は、小論文のメインパートであり、得点を左右する重要な部分です。本体は、以下の3つの要素からできています。

① 「問い」の分析・問題提起
② 主張(問いに対する自分の考え)
③ 論証(根拠・論拠の提示)

これらは冒頭で触れた、論文の定義に対応しています。以下、それぞれ解説していきますね。

本体① – 「問い」の分析・問題提起

このパートは、小論文短期集中講座③で解説した、アウトラインの第二段落に当たります。

大学受験小論文では、出題者側が設定した「問い」に対して、あなたの考えを述べなければなりません。逆に言えば、問いの要求から外れた回答は、得点には繋がらないのです。

一方で、問いの内容は抽象的である場合が大半です。そのため、読み手(受験生)の受け取り方によって、さまざまな回答ができてしまいます。したがって、自分はどんな点に問題意識をもっていて、どのような視点・切り口でその問題に対峙しようとしているのかを明確にします。

本体② – 主張(問いに対する自分の考え)

主張部分は、問いで指定される「◯◯について、あなたの考えを800文字以内で述べなさい。」に対する、あなたの考えです。

実は、主張自体の良し悪しというものはなく、主張自体はどのような主張でも点数に影響は(ほとんど)しないのです。むしろ、主張パートの次の「論証」こそが、小論文の得点に大きく影響するのです。

大学入試要項でも触れましたが、小論文試験では、構成力が重要な評価ポイントの1つです。文章が論理的かどうかは、主張と論証の繋がりが論理的であることが不可欠です。そのため、課題文からヒントを得たり、背景知識を用いるなどして、「論証しやすい主張を作る」という主張の作り方も考慮に入れましょう。

本体③ – 論証(主張をサポートする論拠・根拠)

論証パートは、まさに小論文の肝です。論証は、「問い」に対するあなたの主張を補完・サポートする根拠・論拠を挙げて、あなたの考えに説得力をもたせる役割を担います

「根拠・論拠と理由はどう違うのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。とても良い気づきです。

大雑把に言えば、根拠・論拠と理由は同じ意味合いです。論拠と理由はほとんどイコールです。

論証のイメージを掴んでいただくために、具体的な小論文の問題を想定してみましょう。

少子高齢化が進行する日本において、地方自治体はどのような役割を担い、対策を実施するべきだろうか?資料の論点に言及しつつ、あなたの考えを800字以内で述べなさい。

という問いがあったとします。

そして、あなたが

日本の少子高齢化の傾向を防ぐために、地方自治体は金銭のバラまきをせず、NPOらと協働して子どもを育てる環境を整備し、育児の負担を減らすべきだと私は考える。

という主張を記載したとします。

それでは、主張の説得力を高めるための論証パートは、どのように記載すれば良いでしょうか?すなわち、どのようにして論証、すなわち主張の論拠・根拠を考え、書き進めていけば良いのでしょうか?

ここで、上記「小論文の書き方」で勉強した「概念の埋め込み」という考え方が活きてきます。具体的には、上記「小論文答案で用いる概念(キーワード)を、どのように見つければ良いか?」で記載した3つの方法で、論証に必要な論拠・根拠を作ることができます。

① 課題文に記載されている概念(課題文内の、グラフや図表の読み取りを含む)

② 課題文には記載されていないものの、演繹的・類推的に導かれる概念

③ 問いや課題文で論点となっている事柄についての、背景的な知の中に見出される概念

論証パートでは、あなたの主張に説得力をもたせて、「たしかに、この主張は筋道立てて考えられているなぁ」と読み手を納得させなければいけません。そのためには、説得力のある論拠・根拠が必要なのです。

先ほどの事例では、たとえば下記のように論拠を提示することができます。

このように考える理由は2つある。1つは、課題文Aが指摘するように、出生率が2.0のフランスではベビーシッターを取り巻く環境整備がされていて、親の負担を低減させているからだ。また、2つ目に、課題Bでは、自治体組織の非効率性が指摘されている。ここから、市民の現場のニーズに対して、民間主体で問題に対処する方が効率的だと言えるのではないだろうか。(以下詳述)

上記は、①「課題文に記載されている概念(課題文内の、グラフや図表の読み取りを含む)」を用いた論証の仕方ですね。

結論

結論は、最終段落に書くべき内容です。原則としては、これまでの主張の繰り返しをするに留めましょう。なお、読み手が混乱してしまいますので、結論パートで新しい概念(キーワード)は出さないようにしてください

一般的に、結論部分で評価が大幅に変動することはありません。あくまでも論文の肝は、主張をサポートする論証パートにあることを、今一度押さえておくようにしましょう。

小論文の評価基準


最後に、小論文の評価基準についてお伝えしましょう。もちろん、大学入試の内情は大学内のトップシークレットであり、いくら大学の先生と近い関係にあったとしても入試に関する具体的な情報は知ることは出来ません。

しかし、冒頭でご紹介した名古屋大学大学院教授の戸田山 和久(とだやま かずひさ)先生の著書『論文の教室 – レポートから卒論まで』(NHK出版),2012に、なんと「論文の標準的な評価基準」が記載されています。

受験小論文とは一部適さない部分もありますので、論文の評価基準を受験小論文版にアレンジした上で、皆さんにご紹介しますね。

★★★…小論文になっているかどうかの最低限の基準=採点官にとって最も重要な基準
★★…評価の高い小論文であるための基準

1. 評価以前の常識
①盗用行為が行われていないか ★★★
③名前が書いてあるか ★★★
③その他の要件(制限字数など)にきちんと従っているか ★★★

2. 内容
2−1はじめに(アブストラクト)
①与えられた問いにきちんと答えられているか ★★★
②本文の構成が手短に書かれているか ★★★

2−2 本体
①問いの分析・問題提起
・どのような視点・切り口で、その問いに対峙しようとしているかを示しているか ★★★

②主張
・主張は問いに対して正面から答えられたものになっているか ★★★
・主張は明確で、はぐらかしがないものになっているか ★★★

③論証
・課題文に言及する際、課題文はきちんと読解されているか ★★★
・論拠、根拠は十分に集められているか ★★
・論拠、根拠としたデータは正しく読み取れているか ★★
・データは論旨にとって関連性のあるものか ★★
・議論は妥当か?つまり論拠、根拠からきちんと結論が帰結するか ★★★
・自分の主張に対する反対意見がきちんと扱われ、反証されているか ★★

④その他
・互いに矛盾することが述べられていないか ★★★
・読み手に議論の流れがわかりやすいように、本文の各段落は配置されているか ★★★
・扱っている概念は正しく理解されているか ★★★

2ー3 結論
・結論は、問いにきちんと対応した形で述べられているか ★★★

3 形式
①パラグラフ・ライティングがなされているか ★★★
②文頭と文末の対応はとれているか ★★★
③誤字・脱字は少ないか ★★★
④語の選び方、コロケーションなど、日本語表現力は適切か ★★
⑥引用の仕方は適切か ★★

この小論文の評価基準は、折に触れて読み返して、自分の答案作成または書き直しの際に参考にしてくださいね。

これまで、基礎から学ぶ小論文の書き方として、

・小論文とは何か、作文とはどう違うのか?

・小論文の書き方

・小論文の評価基準

について詳しく解説してきました。いかがだったでしょうか?

一度で理解できなくても大丈夫です。何度も読み返して、小論文答案の作成を通じて、自分なりに理解を深めていってくださいね。

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Kaz
2005年慶應義塾大学総合政策学部入学、2009年卒業。本サイト「小論文のトリセツ」の管理人&慶應SFCインテンシブコースの責任者です。志望大学合格に向けて、受験生を全力でサポート致します!

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