こんにちは。慶應義塾大学2019年度入学のHiroと申します。
今回は、最難関大学の小論文入試で合格答案を完成させるために必要な、知識・教養について話していきたいと思います。
この記事の目次
大学受験小論文の出題意図を読む
まず小論文という科目の出題について考えていきたいと思います。小論文には問いと課題文があり、課題文を読解した上で設問に答えるということが求められます。
自由論述ではなく、課題文が付されているわけですから、課題文の読解をおろそかにして独りよがりなことを書いても合格点には届きません。採点官は採点のプロなので、答案を見ればその人が課題文の内容を本当に理解しているのかどうかは一目で分かります。
そのため、小論文入試で合格点を取るためには、まず課題文を正しく読解することから始める必要があります。
受験小論文の課題文の出題傾向
では、実際にどのような文章が課題文として出題されているのかを考えてみましょう。
小論文の課題文というのは、問題作成を任されたその学部の教授が時間をかけて選び抜いた文章であり、それは、「こういったことに問題意識を持っている学生に入ってきて欲しい」という大学教授からのメッセージの表れでもあるのです。そしてその課題文の内容は、時代を反映するものになっており、今この時代を生きる我々が考えなくてはならない問題というものが、課題文の中に含まれています。
それは必ずしも現代の文章とは限りません。現在我々が直面している問題に、まるで未来を予知していたかのような先見の明を持つ過去の偉人の文章といったものも頻繁に出題されます。
とにかく、小論文の課題文というのは、現代を生きる我々が考えなくてはならない問題についての文章が出題されるのです。
近代に対する理解を深めよう
では次に、どのようなことが課題文の中で“問題点”として扱われるのかについても考えていきたいと思います。おそらく現代の問題点というと、AI、環境破壊、スマホといったものを想像すると思います。しかしながら、実際の出題ではこのような内容は多くないです。というのも、ここまで専門性の高い文章はあまり出題されないということです。
ではどのような内容が出題されるのかというと、それはもっと根本的な“物事に対する考え方”についてであり、端的に言ってしまえば、「近代の考え方は良くなかった」ということなのです。
現代というのは、近代において主流だった考え方によって引き起こされた問題点が浮き彫りになってきた時代なのです。近代における人間・組織・自然・国家といったものに対する考え方が、様々な問題を引き起こすことが分かってきた時代ということです。
例えば、第二次世界大戦時にナチスドイツがユダヤ人を大量虐殺したことは、ほとんどの人が知っていることかと思いますが、その何が問題であったのかを明確に説明できる人は多くないと思います。おそらく「人を殺してはいけない」というような小学生でも分かることしか思いつかないのではないでしょうか。それでは小論文というものは成り立ちません。この大量虐殺の根底には、近代特有の人間に対する考え方というものがあるのです。
小論文入試においては、近代の考え方が引き起こした問題について考え、その考えの何が問題であったのかを深く理解した上で論述する必要があります。
我々の生きる現代というのは、近代の考え方が悪いのは分かったが、今後どのような考え方にシフトしていけば良いのかはまだ模索中という時代なのです。
「とにかく近代の考え方では問題が起こるから良くない。だから考え方を変えないと!」ということは分かったけど、「じゃあ、どうやって変えたらいいのか?」という解決策はいまだにはっきりしていないため、そのことについて正しいプロセスで考えることのできる学生を大学側が求めているということなのです。
よって、近代に関する問題点を正しく理解するために、「近代」という時代について深く知っておく必要があるのです。「近代の人々がどのように物事を考えていたのか?」、ということをあらかじめ理解しておかないと、課題文を読んでも何が問題点として扱われているのかを正しく理解することはできません。「近代の考え方が良くなかった」という主旨の課題文を、正確に読解し、その問題点について深く考察を加え論述するために、「近代」に関する知識をつけなくてはならないのです。
小論文の勉強というと“書き”の練習を想像する人が多いと思いますが、実は最も勉強しなくてはならないのは“読み”であり、その読みを支えるものとして近代の考え方を押さえておかなければならないのです。どのようにして近代の考え方を理解すれば良いのかは、最後にお伝えします。
小論文の論述力の習得は、読解力の基礎を身につけてから
次に論述に関して話していきたいと思います。近代の問題点に関する課題文を理解した後で論述に移ります。この論述に関しては、課題文の内容をどのように解釈したのかを正しく示すことができれば十分合格点に届きます。
課題文の中で、近代の考え方が引き起こす問題点の記述があれば、
・その考え方の背後にある思想
・どうしてその問題点が起きるのか
・では、どのように変えていけば良いのか?
といったことを論述できれば良いのです。正しい読解ができていれば自然と書くべきことは分かるものです。
小論文入試では、課題文を読解して、それを自分の知識も交えて“解釈すること”が求められているのです。賛成or反対し自分の考えていることを主張するというよりは、近代に関する複雑で難解な課題文を、いかに解釈し、噛み砕いて自分の中に落とし込めるか、ということが重要なのです。なので、“書き”のテクニックだけ覚えても、読解が甘いと合格点には絶対に届かないということを覚えておいてください。
まとめ:一緒に読解力を鍛えよう!
これまでに解説してきた要点をまとめると、以下のようになります。
1. 小論文というのは時代を反映しており、現代とは近代が引き起こした問題点が浮き彫りになってきた時代であり、課題文の内容は近代の考え方を否定するものである場合が多い
2. その近代の考え方の何が良くないのかを正しく理解するために、近代に関する知識が必要である。近代の考え方を深く理解していないと、何が否定されているのか分からない
3. 課題文を正しく解釈することさえできれば、書くべきことは自ずと分かってくる。とにかく小論文の本質は“読解”である
最後に、「どのようにして近代という時代を理解すれば良いのか?」について話していきたいと思います。
市販の小論文の参考書で近代性について触れているものはありますが、それらは受験生が簡単に理解できるほどに噛み砕かれていないものがほとんどです。かろうじて理解できたとしても、実際に小論文の問題を解く際に使いこなすとなると、できない場合が多いと思います。
僕自身は、近代の知識を予備校の先生から教わりました。その先生は理解することが難しい近代性というものを、かなり噛み砕いて分かりやすく教えてくれたので、何度も復習して過去問演習を重ねたことで、最終的には近代の知識を使いこなせるようになりました。本当に先生に恵まれた受験生活だったと今でも思います。
なので、今度は僕が、先生から教わった近代性、近代の考え方というものを、自分の言葉で小論文のトリセツの読者の皆さんに伝えていきたいと思います。「人間に対する考え方」、「自然に対する考え方」、「国家に対する考え方」というように、それぞれテーマを絞って近代について学習し、その後そのテーマの知識が必要となる実際の過去問を解いていただいて、解答解説で答えあわせをするというやり方を考えています。
前提となる知識は必要ありません。イチから全て伝えていきたいと思っていますので、しっかり身につけて合格を勝ち取ってくださいね。