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SFC小論文「アイデア問題」における受験生の勘違い
慶應義塾大学総合政策学部/環境情報学部(以下SFC)の小論文においては、しばしば受験者に題意に沿ったアイデアを求める「アイデア問題」が出題されます。SFC小論文が難しいと嘆く受験生の中には、「いいアイデアが思いつかない」と嘆く方もいることでしょう。しかし、それらの多くはただ単にSFC小論文でのアイデアというものを捉え違えていることが非常に多いです。
そこで、この記事ではまず、SFC小論文におけるアイデア問題に対する受験生の勘違いについて、3つの代表的なものをご紹介していきます。
勘違い①:時事ネタや「SFCっぽいネタ」を入れればいいと思っている
このパターンが一番多いです。SFCに対して「何かよくわからないけど最先端のことをやっているキャンパスってことは知ってる」というイメージを持っている受験生にありがちです。
具体的な例で示すと、「とにかくAIの話題を入れたがる」「とにかく最新の国際問題に引っ張ってその知識だけで押し切ろうとする」など。
私は受験生の冬、とある大手予備校のSFC対策授業に参加したのですが(講義の内容は私の主観でしかありませんが最悪でした。前後半と分かれている授業で前半をすべて自分の大学入試の武勇伝に使い、後半も雑談をして終わりました)、そこで他人の答案を読むという時間がありました。
近くにいた数人の答案用紙を見るだけだったのですが、異様なほどに「AI」に絡めたものが多くて驚きました。「別にこれにAI絡める意味ないんじゃないか?」と思うものにも無理やり知識を入れ込んでいるものもありました。
ここまで読めば分かると思うのですが、SFC小論文において「話題で点差が付けられる」ということは絶対にないのです。絶対です。
なぜなら、SFCのアドミッション・ポリシーや紹介パンフレットに「最先端の技術や国際情勢の知識が深い学生を求める」という旨の文章など存在しないから。あるのは「問題発見・解決」に適性のある学生。それだけです。
それなのに、勘違いした受験生は異様なまでに答案にAIの知識をはじめとする最先端の技術についてのネタを仕込みます。なぜか?
「SFCっぽい」からです。人は往々にして「◯◯っぽさ」に弱いですが、SFC入試においても例外ではありません。SFCっぽいもの、SFCが得意っぽいもの、そんなものを受験生は思い浮かべます。しかしながら、表面上の薄い知識を披露することで、果たして採点者(慶応SFCの教員)からの評価は上がるのでしょうか?それが逆効果であることは言うまでもありません。
勘違い②:奇抜なネタを入れればいいと思っている
特にSFC受験生に多いです。
SFCはよく「変人が多い」というイメージを持たれるキャンパスなのですが、それに無理に沿おうとして、明らかに実行可能性のないただ奇をてらっただけの解答を書く受験生も多く存在します。
この手の受験生は得てして自分の突飛な発想に(ただ変化球を見当違いの方向に投げただけ)酔っているだけと自分は感じるのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
それはさておき、奇抜な発想をすること自体は悪くないのですが、「アイデア問題において奇抜な発想をすることが目的」となっている受験生の答案は本当に悲惨なものになります。
他の記事でもご紹介しましたが、いちばん大事なのは「問に正しく答えること」です。問いに正しく向き合って、要求されている事柄を満たす解答であればよいのです。
もしこの記事を読んでくださっている方が自分で「奇をてらっていたかもしれない」と感じたなら、次からは自分の答案を作る時に少し落ち着いて問に正しく答えることを意識しましょう。
勘違い③:SFCの内部事情を入れればいいと思っている
「環境情報学部のこの教授はこういう研究をしている。だからこの話題はこういうふうに教授のことも絡めて書けば受かる!」という認識を持っている受験生は、多いです。
中には「総合政策学部と環境情報学部は、それぞれの研究領域の教授を話題にしたほうがよい」という情報まであります。
ここではっきりと断言しますが、SFCの内部事情を入れたところで点数は1点たりとも上がりません。小論文は暗記科目ではないのです。もしあなたが今SFC小論文に使う用として教授とその研究領域を暗記しようとしているのなら、それらは間違いなく無駄な努力なのですぐにやめましょう。
慶応SFCは、常に問題発見・問題解決のスタンスを学生に求めています。教授という、いかにも「正解」のように思われる選択肢に依存するスタンスは、SFCでは求められていないのです。
SFC小論文のアイデアを考える際のポイント
ここまで、私が今まで受験生目線として見てきた「間違ったアイデアの出し方」についてご紹介してきました。一部は厳しい言い方になってしまったところもあるため、「じゃあどうすればいいんだよ」と強く感じている方もいらっしゃることと思います。
ですがご安心ください。以下に示す「SFC小論文のアイデアを考える際のポイント」を頭に叩き込めば、来年も出題されるであろうアイデアを求める問題に落ち着いて向かうことができます。
ここで注意していただきたいのは、私はここでSFCのアイデア問題を解く際の注意点を示すことはできるものの、実際に考えるのはこれを読んでいる受験生のみなさん本人、ということです。
恐らくこの記事には「SFC小論文 アイデア」などのキーワードでたどり着いたことと思いますが、この記事の内容は「アイデアを出しやすくするための補助ツール」に過ぎません。肝心のSFC小論文でアイデアを出すフェーズは、みなさん自身の思考力に依存します。
思考力は一朝一夕で伸びるものではないため、自分で考えることが面倒くさい、考えたくない、という方がこの記事をお読みになっても厳しいと思いますが、SFC小論文の過去問に向き合い、考え、そしてこの記事にたどり着いたみなさんに対してであれば有用なものであると信じています。
それでは、SFC小論文のアイデアを考える際の3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:完璧を求めない
SFC(特に環境情報学部)ではアイディアを問う問題が数多く出題されますが、創造性を意識しすぎないことが重要です。
例えばSFC小論文には社会問題を取り扱ったものが多いため、受験生は(真面目であればあるほど)「これを綺麗に解決できるような解決策を考えなければいけない」と考えてしまいます。
ですが、受験生がたかが2時間ちょっとで考えた策が、実際に役に立つのならその社会問題など既に解決されています。
実際のところ、問題が解決されていないから、小論文で問われているのです。実効性を完全に捨てろという訳ではありませんが、その実効性にとらわれるあまり答案を作る手が動かないのは本末転倒です。「こんなんでいいの?」というアイデアであっても受かっている人は沢山います。ラフに考えてみてはいかがでしょうか。
ポイント②:アイデアを具体化して、尖らせる
イメージしやすくするために尖らせるという表現をしましたが、詳しく言うと「そのアイデアが”刺さる”人はできるだけ少なく、理想は一人のみにする」ということです。
特に社会問題系では多くの人々に受け入れられるアイデアを考えがちですが、それではせっかくのあなたの「色」が薄まってしまいます。
問題発見・解決と聞くと、普遍的で大規模なものを思い浮かべることと思いますが、そのように大きなところから考えるのではなく、ごく身近で小さな標的を設定して考えることをまずは意識してください。
例えば「付けただけでその日の健康状態が分かって、どのくらい運動すれば健康的であるのかが分かるスマートウォッチ」はたしかに様々な人に使われると思いますが、ここで最近痩せるためにランニングを習慣にしているお父さんのことを思い浮かべて(一人に刺さるような思考)、「付けただけで目標体重までのおおよその走行距離を算出可能であり、その距離までペースなどを示しながら応援してくれるスマートウォッチ」という風に考えのターゲットを絞ってみます。そうすると元々のアイデアよりも尖ります。
自分の小論文の答案内容のアイデアを具体化して、尖らせた方が良い理由として、採点官にとって、あなたの小論文のオリジナリティが印象に残りやすいということが挙げられます。採点担当者は、短期間に大量の答案を読んで点数をつけますので、同じような内容の答案を何十枚、何百枚と読むのです。その中で、オリジナリティがあり、尖った内容の小論文があれば、採点担当者はきっと喜ぶに違いないです。
何でもかんでもこのようなやり方で書けば勝ちというものではありませんが、自分の考えは課題分の問いの内容をチェックしつつ、尖らせていきましょう。
ポイント③:SFC小論文を楽しむ
精神論のような形になってしまいますが、苦しみながら小論文を解いている受験生よりも「なんか面白いこと言ってんな」といった風に問題文から資料文まで楽しみながら小論文と向き合える受験生が一番強いと思います。
他の学部、他の大学に比べSFC小論文はユニークな題材や問題を出してくるため捉え方によっては非常に面白いです。
確かに解きづらいといえばそうなのですが、そうではなく「面白い」と捉えることができると、それだけでSFCへの適性があると言えるのではないでしょうか。
まとめ
いかがだったでしょうか。ここまでSFC小論文のアイデア問題へのアプローチについて紹介してきましたが、もう一度大事なところをおさらいします。
・アイデアに完璧を求めない
・アイデアを尖らせる
・楽しむ
以上の三点がSFC小論文におけるアイデア出しであなたの助けとなるであろう考えです。
ぜひこれらを参考にして過去問演習に臨みましょう。