こんにちは!慶應義塾大学総合政策学部1年のHiroです!
今回は官僚制的な組織について話していきたいと思います。
この記事の目次
はじめに
今回からの内容は、ロゴス・パトス・近代的主体・実存・従属主体という考え方が頭に入っている前提で話していきます。これらの知識に関してまだ不安がある人は今一度過去の記事に戻って確認してみてください。
これらの知識についても多少の説明は加えますが、メインではないので必要最小限にします。ご自身のノートやメモを参照しながら確認していくというのも良いかもしれません。今後の内容は、前回までの知識が確実に理解できていれば、理解することはそこまで難しくありません。特に覚えるべきこともないので、理解さえできていれば良いのです。
絶対に覚えておかなければならない内容ですが、ロゴス・パトスのように頑張って覚えようとしなくても覚えられると思います。少しリラックスして取り組んでほしいと思います。
近代に特徴的な組織のあり方:官僚制
まず初めに覚えておいてほしい言葉があります。
『近代の 組織と言えば 官僚制』
五・七・五なのは、たまたまです(笑)。
これをこのフレーズのまま覚えておいてほしいです。近代における組織というのは、全て官僚制という考え方の元で成り立っていました。企業のあり方、国家のあり方は官僚制という考えに基づくものでした。
今回は官僚制というものの本質と、その問題点について話していきたいと思います。
官僚制の組織の意思決定プロセスは、トップダウン型
官僚制の組織というのは、端的にいってしまえば、「上に逆らってはいけない。上の言うことは絶対」というものです。この考え方は現代でもどこかで聞いたことがあると思います。それは近代の官僚制的な考え方がいまだに残っていると言うことなのです。
では官僚制のあり方を詳しく見ていきたいと思います。
官僚制の組織とは、従属主体により構成される組織になっています。従属主体とは、他者によりつくられた規範を絶対化し、自身の行動規範にすることで、その規範を超えた側面(他者の他者性)に触れず、規範に対して新たな側面を組み込むことができないので、規範をアップデートさせることができないのでした。こういった従属主体が、ピラミッド型のヒエラルキー構造を取って組織化します。
官僚制の組織は、「トップダウン」のあり方を採用します。トップダウンとは、上から下に指令が下り、末端の人間が歯向かうことは絶対に許されません。
会社で言えば、会長の下に社長がいて、社長は会長の指示を絶対化します。会長の指示は絶対であり、その指示を超えた行動をとることは許されません。これは、会長により創り出された規範を、社長が内面化・絶対化している状態であり、社長は会長の従属主体であり、支配されている状態になります。
これと同じことが、社長と副社長の間にも起こり、副社長と専務の間にも起こり、、、ということになります。結果として、ピラミット型のヒエラルキー構造を持つトップダウンの官僚制組織が完成します。
以前の従属主体の解説記事でも話しましたが、行動規範をマニュアル化されているということであって、そのマニュアルを超えた行動をとることはできないのです。末端で官僚制組織のマニュアルを内面化した組織のメンバーは、そのマニュアルを超えた行動をせず、そのマニュアルを超えた側面(他者の他者性)に触れることはありません。
実際のところ、他者の他者性に触れることが全くないと言うことではないでしょうが、仮に組織のメンバーが他者の他者性に触れたとしても、それを規範=マニュアルに組み込むことはできません。規範にない側面を規範に組み込むという行為は、組織に対する異議を申し立てると言うことであり、官僚制の組織では上の指示に歯向かうこと、すなわちマニュアルに背くことは絶対に許されません。ここが官僚制組織の問題点です。
官僚制の組織は、トップダウンのあり方で規範が上から下に降りてきて、下の人間が規範を超えることが許されない。規範を超えた側面(他者の他者性)に触れ、その側面を規範に組み込み、規範を拡大させアップデートさせるという一連の流れを伴わないので、いつまでたっても規範が変わらず、それがゆえに問題が起きます。
例えば、末端のレベルで何か問題が起きたとしても、規範を変えることができないため、問題が悪化し続け、引き返すことができなくなるまで問題が大きくなってから、上層部の人間が規範をアップデートしようとするが、大抵の場合は間に合いません。
本来ならば、問題が生じた時点でその問題を共有し、規範に新たな側面を組み込み、規範をより良いものにアップデートしなければなりませんが、官僚制の組織ではそうはいきません。フットワークの重さ、すなわち意思決定プロセスの遅さは、官僚制の代表的な問題点なのです。
官僚制の組織は、人間機械と表現できる
官僚制の組織は「人間機械」と呼ばれることがあります。上記の特徴を考えれば、人間味のなさから、機械だと言われる理由もわかります。
ここでは官僚制の組織が機械だと言われる、もう一つの理由について話していきたいと思います。官僚制の組織のメンバーは、トップダウンのヒエラルキー構造であるがゆえに、組織の規範を絶対化した従属主体となっていつことを先ほど確認しました。上から下に規範が降りてくるのであって、組織のメンバーは皆同じ規範を内面化していると言うことになります。全員同じ規範を内面化していると言うことが鍵になります。
それでは、官僚制組織のメンバーの一人が抜けたとするとどうなるでしょうか?そのメンバーを埋め合わせるために、新たなメンバーを入れることになります。この新たなメンバーの役割というのは、組織の規範を内面化し、マニュアル通りに行動すれば良いのです。
そうなると、メンバーが入れ替わったことによる影響は理論上はないわけです。官僚制の組織の中では、メンバーは皆同じ規範を内面化しているため均質であり、誰かが入れ替わったとしても、新しいメンバーに同じ規範を内面化させれば済む話です。
要は、官僚制組織におけるメンバーの存在は、官僚制という名の大きな“機械”の単なる“部品”に過ぎないのです。部品が欠けたら、また同じ部品を導入すれば良い。そういう考え方なのです。組織の管理や生産性という面では、官僚制は効率的な考え方でしょう。街中の店で働く外国人労働者も官僚制組織のメンバーなのです。
何か決まり切った作業を進める際には官僚制の考え方は有効であると言えるでしょう。
官僚制の組織は、創造性に欠ける
官僚制の組織というのは、組織の規範を超えた側面(他者の他者性)触れないため、規範に新たな側面を組み込むことができません。そのため官僚制は、創造性とは無縁のあり方です。
そもそも創造性というのは、自己の先入観を超えたものであるはずですので、他者の他者性から生まれるものだと捉えることができます。官僚制の組織は常に先入観にとらわれるので、他者の他者性に触れることがなく、新たな価値を創造することはできません。
官僚制組織のまとめ
以上より、官僚制の組織の特徴は以下の三つにまとめることができます。
①トップダウンのヒエラルキー構造で、組織のメンバーは従属主体化している
②官僚制組織は人間機械であり、内部のメンバーは機械の部品同様に交換可能である
③官僚制のあり方では、他者の他者性に触れることができないため、新たな価値を創造することができず、先入観に固執してしまう
以上になります。
いかかでしたでしょうか。今まで近代的主体だのロゴスだの言ってきたのは、こう言った近代の考え方を説明するためでした。
近代的主体やロゴスと言った言葉を知らなくても理解することは不可能ではないですが、やはり抽象的な概念として頭に入っていると、近代の思考の枠組みについての理解のハードルが下がると思います。
今回の官僚制に関する記述を読んで、前回までの知識が怪しいと思ったら、ぜひ復習してみてください。今回の官僚制の話もそうですが、過去の記事も何度も復習して、完全に理解しきってほしいです。理解するのには、確かに時間がかかると思います。ただ、一度完全に理解しきってしまえば、とてつもなく汎用性の高い知識となり、真に“使える知識”となります。なので、最後まで諦めないでやりきってほしいと思います。
今回は官僚制という「近代的主体の組織」でしたが、実は、ネットワークという「実存の組織」というものも存在します。次回ネットワークについて学習したら、ついに過去問に入っていきたいと思います。これらの官僚制組織とネットワークの知識がドンピシャでハマる問題というのは結構多くあります。
今日働き方改革などと言われていますが、それは組織のあり方が見直されようとしているのです。なので、社会情勢を反映する大学入試小論文においてその話が出題されるもの不思議なことではありません。
詳しい話は次回以降しますが、これからの勉強方針として、
①「ネットワーク」について学ぶ
②官僚制とネットワークの知識を使って、実際に過去問を解いてみる
という二つのことを念頭に置いておいてください。ただ先を急がないように注意してほしいです。一つ一つ確実に抑えていってください。
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次回は「ネットワークという考え方」について話していきたいと思います。