慶應SFC小論文 過去問答案例・解説【入試傾向と対策も徹底解説】

慶應義塾大学 総合政策学部2021年 詳細解説・答案例

慶應SFCインテンシブコース

慶應義塾大学 総合政策学部(2021年) 【問い】

総合政策学部で扱う 「政策」 は幅が広く、 身近な共同体の取り組みから国際社会での取り決めに至るまで多岐にわたります。 政策が扱う課題がさまざまであるため、 それに向き合う方法も多彩になりますが、 いずれの場合も、 まずはその課題の構造を分析することが入口になります。

分析の方法には、文書やインタビューといった質的データを扱う定性的手法と、アンケー
トや統計、 実験結果といった数的データを用いる定量的手法があります。 長いあいだ、 この二つの手法は別々に行われてきましたが、近年ではその両方を用いて研究する混合手法が
盛んになっています。 それはそれぞれの手法が持つ長所と短所を活かし、 補うためです。
定性的手法は、 ある事例に関する文字情報を集めて分析することで、 結果が引き起こされた原因を探ること、 発見することに長けています。 一方で、 その原因が他のどのような事例にも当てはまるか、つまり普遍的な原因かどうかを検証することは苦手です。
それに対して、 定量的手法は、 多くの数的データを解析することによって、 どの要因がより強く結果に影響しているかを明らかにできます。 一方で、 分析にあたって取り上げられる要因は、私たちがすでに発見しているものに限られます。混合手法は、この双方の長所をもってそれぞれの短所を補うことを目指すものです。 多くの場合、 文書やインタビューといった定性調査によって原因と考えられる要素を定め、それらがどのような結果をもたらすかを定量分析で明らかにするという順番が取られます。
この試験でもみなさんにそうした手順を踏んで課題に取り組んでもらいたいところです
が、あいにく試験時間も問題文の量も限られています。 本格的な分析に挑むことは入学後の楽しみに取っておくこととし、ここでは入口となる定性分析の、 そのまた入口に取り組んでもらいたいと思います。

課題を分析するといっても、思いつきや行き当たりばったりで進めては、着実な成果を得
ることは難しいでしょう。 まずはきちんとした手法に基づいて課題の構造を理解し、そのうえで課題を解決する方法を探ることが肝要です。
そのため、まず課題を捉えるための道具と考え方を、着眼点 (ツール 【1】) 構造理解 (ツ
ール 【2】)、 解決方法 (ツール【3】) に分けて紹介します。 それを用いて、問題(問1~
3) に答えてください。 分析の対象となる実例はケース 【A】〜 【C】 として問題文に続け
て掲載してあります。

ツール 【1】~【3】ーーーー 4~6ページ
問題文ーーーーーーーーーー  7ページ
ケース 【A】~【C】ーーーー 8~15ページ

【問題】
ここまで、課題を捉えるための道具と考え方を示してきました。 よりわかりやすく考えら
れるように、 具体的な実例を用意しました。 これを題材として問題に挑んでみましょう。
次のページから、 政策の事例が3つ、ケース 【A】〜【C】 として示されています。 【A】
は政治、 【B】 は外交、 【C】 は社会における実例です。 事例の内容が分かりやすいように新聞記事と当事者の証言を組み合わせています。 新聞記事は事例の全体像を理解することに
役立つでしょう。 当事者の証言はいずれも躍動感に富む体験談ですが、 同時にここで語られていないことも、 本人が気付いていないこともあるでしょう。
以下、上述したツール 【1】〜【3】 を用いて、課題を構成する要素を見出して整理し(問
1)、課題の構造を描き出し (問2)、その実践を改善するための具体的な提案 (3) を行ってください。

問1 課題を構成する要素を見出し、 整理する
ツール 【1】 を読んだうえで、 ケース 【A】 〜 【C】 それぞれについて、 実施された政策とその目的を記し、アクターを書き出してください。 アクターは主要なものを4つまで書
くことができます。 そのうえでアクターごとに、 それぞれが持つ利益、理念を書き出してください。 そして、それらはどのような制度のもとで動いているかを記してください。
ケース 【A】~【C】 は新聞記事と当事者の語りですから、記者や本人が見えていない、
語っていないこともあるでしょう。 そうした 「書かれていないこと」 があればそれも含めて、みなさんが重要だと考えるものを書き出してください。

問2 課題の構造を描き出す
ツール 【2】 を読んだうえで、ケース 【A】 〜 【C】 のどれか1つを取り上げて課題の構
造を図示します。 まず、取り上げるケースの番号・名称に○をしてください。 そのうえで、
そのケースに潜む本質的な課題を見出し、 どのような課題としてフレーミングすべきかを
考え、それを示すタイトルを自分のことばで記してください。 そのうえで、 課題の構造をアロー・ダイアグラムの形式で描いてください。 その際、 問1で書き出した要素を考慮して、より現実に即したものになるよう心掛けてください。

問3 課題を解決する方法を示す
問2で取り上げた課題について、ツール 【3】 を参考に、 システム思考の観点に立った改
善の提案を論じてください。 その際、 問1、問2を踏まえて、 誰が何をするかを具体的に記
してください (800字)。

慶應義塾大学 総合政策学部(2021年) 【答案例】

問1

ケース【A】

《政策》:同性パートナーシップ制度
《目的》:同性カップルを認める制度をつくる
《アクター / 利益 / 理念》
・LGBT当事者 / 同性カップルにとって社会がどれだけ生きやすいか / 当事者として声を上げること
・有権者 / 自たちの暮らしがよりよくなる / 投票をする
・同性パートナーシップ政策・同性婚賛成の議員 / LGBTの当事者が実際にいることがどれだけ認められるか / 当事者以外に正確な情報を伝える
・同性パートナーシップ政策・同性婚賛成派以外の議員 / 選挙でどれだけ支持されるか / 伝統的な家族の形を重んじる
《制度》:LGBTに関して正確な情報が知られていない状況、同性パートナーシップを認めない制度、伝統的な家族観の固着化

ケース【B】

《政策》:日本におけるWTOへの設立締結承認案と食料需給価格安定法案などの関連法の成立
《目的》:米市場の部分開放と自由貿易としての新たな貿易秩序づくりの一翼を担う
《アクター / 利益 / 理念》
・WTO / 世界各国をどれだけWTOとの協定締結を促進できるか / 自由貿易体制の維持・拡大
・内閣 / 農業の自由化をとおして経済のどれだけ活性化されているか / コメ市場の部分開放
・反対論者 / 国内の米自給率をどれだけ守れるか / 一粒たりとも輸入を認めない
《制度》:自由貿易化を進め、市場を開こうとする国際的な潮流とそれにともなうWTOといった国際的枠組みや国内制度。日本の米は自給し、米農家を守らねばならないという価値観

ケース【C】

《政策》:少人数保育の立ち上げと普及
《目的》:待機児童問題の緩和
《アクター / 利益 / 理念》
・保育所に子どもを預けたい親 / 子育てと就活または働くことを両立したい / 子どもを保育所に預けたい
・周辺住民 / どれだけ穏やかで静かな生活をおくることができるか / 住まいの周辺に保育園を開設させたくない
・保育士 / ひとりひとりの園児をどれだけ丁寧に見ることができるか / 少人数の園児を保育したい
・既存の保育団体 / 既得権益をどれだけ守れるか / 保育団体を自由化しないことで、保育の質を落としたくない
《制度》:児童福祉法と厚生労働省の政令による保育所認定のための最低20人という定員数、国と自治体、区議会の関係

問2

問3

問2の構造を見渡すと、当事者からの一方向的な情報発信を中心としているために、効果的な情報伝達と普及が難しくなっていることが考えられる。自分たちの暮らしを考えて投票する有権者の多くは、性的マイノリティの問題を知識として認識していても、実感として本当に当事者が存在するのかが不確かであり、伝統的な家族観に基づいて誤った理解をしてしまう。これでは、保守的な議員に態度の変更をせまる変化は現れない。
この限界を乗り越えるために、二つのワークショップを提案する。まず、利益の親和性が高い同性パートナーシップ制度・同性婚(以下:同性カップル関連制度)に賛成する議員と当事者が協働して有権者に向けた対話型ワークショップを開催する。その内容は、有権者たちと当事者の人々の暮らしの違い等を互いに聴き、学んでゆく。さらに、賛成派の議員と当事者らが、同性カップル関連制度に無関心または反対の議員にも対話型ワークショップの場を設ける。内容は、特に同性カップル関連制度等を主題に尋ね合う。どちらのワークにおいても、互いの存在自体を否定する言葉を禁止するなどのルールを設けることは留意すべきである。
全体的に見れば、各アクター同士が実際に同じ時空間を共有して相互にかかわることで、互いに異なる存在であり、同じ社会で暮らしていることを実感することになる。このリアリティが、当事者と議員、有権者の間につながりがつくられると同時に、当事者だけでなくワークショップに参加した人々が連鎖的に周囲を巻き込んでいく。そうすることで、同性カップル関連制度に賛成する議員と有権者を連鎖的に増やし、選挙の支持率を利益として反対の立場を取る議員に態度を変化させるまで、性的マイノリティとその諸問題の存在感を伝播させていく。その帰結として、反対派の伝統的な家族観を少しずつ解体し、同性カップルが生きやすくなる制度を議論し、認められる土壌を形成していくのだ。(800字)

慶應義塾大学 総合政策学部(2021年) 【解説】

まずは問いを読解するところから始めましょう。
リード文は疎かにされがちですが、問題全体をとおしてのポイントであったり、問題の狙いが書かれているために、解答の指針を立てる上で重要になります。ここで意識すべきことは、単に正確に読み解くだけではなく、実際に問題を解くために「使えそうな」記述を見出すことです。

今回のリード文では、「文字情報を集めて分析することで、結果が引き起こされる原因を探ること、発見することに長けている」一方で、「普遍的な原因かどうかを検証することが苦手」である定性的手法を取り扱う問題であることがわかります。さらにここから導かれるのは、今回の問題が「原因発見」することと関連しているということです。これらは解答の上で「使えそうな」記述と言えます。

つづいて実際に設問を読解していきます。設問を論理的に整理することは、小論文を解く上で最も重要なことです。小論文が他の科目と違うのは、「何が問われているか」を正確に掴むことがそもそも困難である点ですから、ここはじっくり時間をかけましょう。

ここで読み取るべきは、【問題】の導入部末尾の記述です。この問題では、ツールを用いて、問1で課題を整理し、問2で課題を構造化し、問3で実践の改善案を出すという一連のプロセスが細分化されています。したがって、この全体の流れに整合するように解答を考えることが要求されていることがわかります。

それでは実際にそれぞれの問いの解説に入っていきます。

問1

この問題に取り組んだSFC生や受験生は、しばしば時間が足りなかったといいます。おそらくその原因の一つに、「問1」に時間をかけすぎてしまうことが想像されます。資料を正確に読んで、「書かれていないこと」まで書き出すというのは正確にやろうと思えばどこまでも時間がかかってしまうのです。

しかし、全体の問題を俯瞰して見れば、この問題がメインでないことは一目瞭然です。これは試験問題ですから、配点を考慮してこの問題にそこまで時間をかけない方が得策と言えるでしょう。

またツール【1】は少々掴みづらい資料ですが、整理すれば以下のようになります。ここでも、リード文同様、解答に「使えそうな」、まさにツールを見出すことが重要です。

アクター:課題に関わる人や集団。意識的に関わるものもあれば無意識的に関わっている者もいる。
利益:それぞれのアクターが持つ利害のこと。パラフレーズすれば、損得勘定のこと。
理念:それぞれのアクターが持つ考えや信念のこと。パラフレーズすれば、それぞれのアクターの方向性のこと。
制度:私たちを制約するルールや仕組み。

問2

まず、「そのケースに潜む本質的な課題を見出し、どのような課題としてフレーミングすべきか」を自分のことばでタイトルにするという問いについてです。

ここでいう「課題」が何を指しているのかを特定することがわかりづらいので、この点を先に抑えましょう。第一に、ケースと課題は別物のようです。そして、先に読解した【問題】の導入末尾に、「課題の構造を描き出し(問2)、その実践を改善するため~」という記述があります。ここから読み取れるのは、「その実践が課題を抱えていて、それを改善する」という一連の流れでした。したがって、ここでいう「課題」とはケースとして示された「実践」が孕むものです。

逆に言えば、ここで政策の対象となっている社会問題そのものについて構造を描き出すことは誤りと言えるでしょう。ケースAであれば独立変数に「伝統的家族観の固着化」を置くことは、本設問の筋にあっているとは言い難いです。そうではなくて、「当事者が声を上げること」といった実践の文脈で生じる要素を抽出する方が正当でしょう。

それから、最後の一文にある「問1で書き出した要素を考慮して、より現実に即したものになるように」という記述はきちんと抑えましょう。導入部に確認したように、この問題は一連のプロセスのなかにあります。問1で整理した要素を明示的に使用することで、この要求に応えていることを示しましょう。

また、ツール【2】の資料も内容が掴みづらいですが、整理すると以下のようになります。

フレーミング:アクターによる利益と理念に基づいた課題の捉え方。俯瞰が大切。
独立変数:課題の原因となっている要因。
従属変数:独立変数に対する結果。
媒介変数:原因と結果のあいだにある様々な変化の要因。
アローダイアグラム:課題の構造を独立変数から媒介変数を経て従属変数へと至る流れとしてまとめたもの。

問3

問3は全体の流れの中では「問題解決」の役割を担っています。そして肝要なのは、「システム思考の観点に立って」解答することです。

ツールを使って問題を解くとき、そのツール自体だけではなくて、そのツールを「何に使うのか」という点を把握しなければなりません。トンカチは、釘を打つために使われるのであって、土を耕すためには使われません。

ツール【3】の資料から、システム思考とは、「パターンの全体を明らかにして、効果的に変える方法を見つけるための概念的枠組み」であることがわかります。つまり、課題全体を見渡して、アクターやその行為間のつながり方(=パターン)を把握した上で解決策を考えるのがシステム思考ということになります。また、ツール【3】の二つ目(下部)の資料が示すように、解決策自体も、一つの実践だけではなく、アクターによる具体的な行為の連関を全体の流れとして提案する必要があるようです。そのヒントであり条件として、「誰が何をするかを具体的に記してください」という指示があります。

こうした点をよく踏まえて、さらに問2、問3の解答を的確に利用しながら解答を作成しましょう。

慶應義塾大学 総合政策学部(2021年) 【総評】

総合政策学部2021年度の問題は、要求が多いため読解に時間がかかりますが、発想を問われる自由度の高い問題は少ないので、正しく設問に従えば対応できます。特に、「知識不足」を嘆く声を時折耳にしますが、むしろこの問題は読解力による問題発見の力が要求されていると思います。たとえどれだけふんだんに知識を織り交ぜていても、要求に応えていなければ得点にはつながりません。その意味で、この問題は読解力を試す問題として非常に有効と言えるでしょう。

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ABOUT ME
カイ
2021年に慶應義塾大学総合政策学部に英語・小論文受験で合格・入学したカイです。現在は、哲学対話や身体にまつわる学びを楽しんでいます。進学校出身ではないからこその等身大のアドバイスを心がけて、みなさまの合格を応援いたします。

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